なま)” の例文
左様さうした立場から眺めると、如何いかすさまじい光景でも、如何になまぐさい舞台でも、それに相応した内面的背景をそなへて居ないといふ点におい
点頭録 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
平和主義を抱ける洋人某、つて余と「八犬伝」を読む。我が巻中に入れたる揷画、なまぐさき血を見せざる者甚だまれなり。
想断々(1) (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
なまにてしよくするは○魚軒さしみなますすし也。○る○やくその料理れうりによりて猶あるべし。しほづけにしたるを塩引しほびきまた干鮏からさけといひしも古き事、まへに引たるしよに見えたるがごとし。
なま臭い匂いでもするだろうと思った左馬之助は、出来るだけ娘の身体に触れないようにして居りましたが、間もなくそれは大変な間違だったことに気が付きました。
いかになりつるやと、あるひはあやしみ、或は恐る恐る、一八二ともし火をかかげてここかしこを見めぐるに、明けたる戸腋とわきの壁に一八三なま々しきそそぎ流れて地につたふ。されどしかばねほねも見えず。
なまくさきオゾンのにほひ
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
代助は斯んな話を聞くたびに、いさましいと云ふ気持よりも、まづ怖い方が先につ。度胸を買つてやる前に、なまぐさいにほひ鼻柱はなばしらを抜ける様にこたへる。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
四八じゆこそ鬼になり給ひつれと、連忙あわただしく逃げさりぬるのちは、よな々里に下りて人を四九驚殺おどし、或は墓をあばきてなま々しきかばねくらふありさま、まことに鬼といふものは昔物がたりには聞きもしつれど
僕は庭を見廻した。庭という名のもったいなく聞こえる縁先は五坪いつつぼにも足りなかった。すみ無花果いちじくが一本あって、なまぐさい空気の中に、青い葉を少しばかり茂らしていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
度胸を買ってやる前に、なまぐさいにおいが鼻柱を抜ける様にこたえる。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)