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耳門
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くぐり
ふりがな文庫
“
耳門
(
くぐり
)” の例文
耳門
(
くぐり
)
からおよそ十五歩ばかり離れたところから、ふと門を眺めた時、自分の心を苦しめ悩ましていた原因をたちまち察知したのである。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
耳門
(
くぐり
)
から邸内へはいつて行くと信者ででもあらうか、
痩
(
や
)
せ細つた中年の女が、
大麦藁帽子
(
おほむぎわらばうし
)
をかぶつて、庭の草むしりをしてゐた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
或る朝庭先へ出て、
厩
(
うまや
)
の所で
馬勒
(
ばろく
)
を直していると、いきなり彼女が
耳門
(
くぐり
)
から駈け込んで来ました。
跣足
(
はだし
)
で、下袴一枚の姿です。
女房ども
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
船板塀
(
ふないたべい
)
をした二階家があって、
耳門
(
くぐり
)
にした
本門
(
ほんもん
)
の
簷口
(
のきぐち
)
に小さな
軒燈
(
けんとう
)
が
点
(
とも
)
り、その脇の方に「山口はな」と云う女名前の表札がかかっていた。
水魔
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
セリファンが門を
敲
(
たた
)
きだすと、間もなく
耳門
(
くぐり
)
があいて、上っ張りでも頭から被ったらしい人の姿がにゅっと現われて
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
▼ もっと見る
点滴の音は聞えぬが
足駄
(
あしだ
)
をはいて女中が郵便を出しにと
耳門
(
くぐり
)
の戸をあける音と共に重そうな
番傘
(
ばんがさ
)
をひらく音が鳴きしきる虫の声の中に
物淋
(
ものさび
)
しく耳についた。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
梯子
(
はしご
)
を下りる音も聞えた。善吉が耳を澄ましていると、
耳門
(
くぐり
)
を開ける音がして、続いて
人車
(
くるま
)
の走るのも聞えた。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
黒門町のお初は、しなりしなりと三斎屋敷の門前に近づいたが、扉こそとざされておれ、
耳門
(
くぐり
)
はまだ閉っていないらしく、寝しずまるには、間があるようだ。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
病室と入口の違った診察室は、大きな黒門の
耳門
(
くぐり
)
を
潜
(
くぐ
)
ってから、砂利を敷き詰めた門内をずっと奥まったところにあった。中へ入ったのは笹村とお銀とだけであった。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
『幸ちゃんに今帰ったからッて、そ言っておくれ、』と時田は庭の
耳門
(
くぐり
)
へ
入
(
はい
)
った、お梅はばたばたと
母屋
(
おもや
)
の方へ
駆
(
か
)
け出して土間へそっと入ると、幸吉が土間の入口に立っている。
郊外
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
と云って船を
著
(
つ
)
けさして、
陸
(
おか
)
へあがり、
耳門
(
くぐり
)
の方へ往って中の容子を伺っていたが、耳門の扉が開いているようであるから思いきって中へ入った。
円朝の牡丹灯籠
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
……彼女は
耳門
(
くぐり
)
をあけてはいって来ましたが、その朝以来、私たちは夫婦も同然の暮らしをすることになりました。……
女房ども
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
「あら、あなた、どこへいらっしゃいますの? 今わたし
耳門
(
くぐり
)
をあけてさしあげますわ」とマリヤが叫んだ。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
西宮はまた今夜にも来て様子を知らせるからと、吉里へ言葉を残して
耳門
(
くぐり
)
を出た。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
わたしの家から
移植
(
うつしう
)
えた秋海棠の花西瓜の色に咲きたる由
書越
(
かきこ
)
された手紙の文言を思出してはなお更我慢がならず
耳門
(
くぐり
)
の戸に手をかけるとすらすらと明いたのみならず、内にはいればこれはいかに
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
耳門
(
くぐり
)
の方へ往っていた蛇はその時こちらの縁側の方へ方向をかえた。それは何かを暗示しているように思われた。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
ここで彼は明らかに、その声は
耳門
(
くぐり
)
からほど近く、庭の中に立っている湯殿の中から漏れてくるのであって、疑いもなく女のうめき声だということを確かめた。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
見ると——その
耳門
(
くぐり
)
は上の方が四つ目格子になっていましたが、彼女ももう起きていて、中庭へ出て鴨に餌をやっています。私はつい、彼女の名が口に出てしまいました。
女房ども
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
吉里は
一語
(
ひとこと
)
も
吐
(
だ
)
さないで、
真蒼
(
まッさお
)
な顔をしてじッと平田を見つめている。平田もじッと吉里を見ていたが、堪えられなくなッて横を向いた時、仲どんが
耳門
(
くぐり
)
を開ける音がけたたましく聞えた。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
煙草
(
たばこ
)
の煙の
籠
(
こも
)
り過ぎたのに心づいてわたしは手を伸ばして
瓦塔口
(
かとうぐち
)
の
襖
(
ふすま
)
を明けかけた時彩牋堂へ
宛
(
あ
)
てた手紙を出しに行った女中がその帰りがけ
耳門
(
くぐり
)
の箱にはいっている郵便物を
一掴
(
ひとつか
)
みにして持って来た。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
お菊さんは
耳門
(
くぐり
)
を入ると右の手に持っていた
岡持
(
おかもち
)
を左の手に持ちかえて玄関の方を注意した。青ざめたような光が坂の下に見る火のように下に見えていた。
萌黄色の茎
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
書生は左側にある
耳門
(
くぐり
)
から入った。主翁もそれに
跟
(
つ
)
いて往った。門の中には門番のいる
磨
(
す
)
り
硝子
(
ガラス
)
の小さな建物があって
燈
(
ひ
)
が
点
(
つ
)
いていたが、番人の姿は見えなかった。
黄灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
左側に
耳門
(
くぐり
)
があった。女はその方へ歩いて往って門の扉に手をやると扉は音もなしに
開
(
あ
)
いた。女はそうして扉を開けてから
揮
(
ふ
)
り返って、男の来るのを待つようにした。
蟇の血
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
表庭との境いになった板塀の
耳門
(
くぐり
)
が半ば
啓
(
あ
)
いていた。広巳はその方へふらふらと往った。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
蛇は二人の正面になった柾の方へにょろにょろと
這
(
は
)
っていた。定七は蛇の方を見い見い
斜
(
ななめ
)
に往って表庭と入口の境になった板塀の方へ往って、そこにある
耳門
(
くぐり
)
の
桟
(
さん
)
を
啓
(
あ
)
けて出て往った。
春心
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
“耳門”の意味
《名詞》
耳孔の入り口。
潜り戸。
(出典:Wiktionary)
耳
常用漢字
小1
部首:⽿
6画
門
常用漢字
小2
部首:⾨
8画
“耳門”で始まる語句
耳門戸