“くぐり”のいろいろな漢字の書き方と例文
語句割合
潜戸30.0%
耳門30.0%
潜門20.0%
10.0%
久々利2.0%
傍門2.0%
小門2.0%
耳戸2.0%
耳門戸2.0%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
鴻山は別な用口ようぐちへ廻って、奥坊主の者に、源内秘方の蘭薬を、お千絵にのますことを言いのこして、急ぎ足に裏門の潜戸くぐりをぬけ出した。
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
耳門くぐりから邸内へはいつて行くと信者ででもあらうか、せ細つた中年の女が、大麦藁帽子おほむぎわらばうしをかぶつて、庭の草むしりをしてゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
と、今にも、ピシャリ、潜門くぐりに小さく開いているのぞき窓をしめてしまいそうな形勢だから、お艶はもう泣かんばかり——。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
くぐりを手で押すと、音もせずにいた。八は門の内に這入つた。此時がたがたどしんといふ恐ろしい音がした。八はびつくりして背後うしろの潜戸に手を掛けた。
金貨 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
村人の言によれば社員ふう特派使節がわざわざ美濃久々利くぐり村に足を運ばれること三度、某工人はもとより、瀬戸のT氏をわずらわすなどずいぶん大がかりの努力であった。
傍門くぐりをあけて文次がずいとはいり込むと、それに「ごめんやす」とも何ともいわずに安兵衛が続いて、陽だまりの草のなかを
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
スタールツェフは小門くぐりからはいると、まず第一に目に触れたのは、ひろい並木路の両側にずらりと立ち並んだ白い十字架や石碑と、それやポプラの木がおとす黒い影とであった。
イオーヌィチ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
下手に耳戸くぐりのようなドア。ドアを開けると急傾斜の階段の上り口が見える。窓を通して、人家の屋根、ニコライ堂、禿山などのウラジオ風景。遠くに一線の海。
女房の眼は嫉妬に輝いた。彼女は耳門戸くぐりをつと開けた。女は跫音に驚いたように雨戸を離れた。赤いきれいな帯の端が女房の眼についた。
宝蔵の短刀 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)