一 偕老同穴は夫婦の約束なれども、如何せん老少不定ろうしょうふじょうは天の命ずる所にして、偕老果して偕老ならずして夫の早く世を去ることあり。
新女大学 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
人間は老少不定ろうしょうふじょうためし明日あすにも知れんが人の身の上、殿様のお顔もこれが見納みおさめになるかと、今日こんにちは御暇乞にまかり出ましてござります
そなたもわかいのに歿なくなって、まことにどくなことであるが、なかはすべて老少不定ろうしょうふじょう寿命じゅみょうばかりはんとも致方いたしかたがない。
だが、人間というものは、老少不定ろうしょうふじょうなもんだから、お松さんが、もしものことがあって……きみ公のようになってしまった日にゃ、ムクを可愛がる奴がいねえ
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
老少不定ろうしょうふじょうを役に立てる。こんな具合で、上が死んでも下が死んでもそれ相応の説明をつけて悟りを開いているが、自分と同年輩のものが死ぬと急に慌て出す。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
……それにしても人は老少不定ろうしょうふじょう、いつわしがあえなくなろうもしれぬ。……わが身はかなくなったと知らば早瀬、なき後も志かわらず、貞女の心を! 心を貫いて! ……
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「どうするって、仕方がないわ、ねえあなた。老少不定ろうしょうふじょうっていうくらいだから」
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そりゃあ老少不定ろうしょうふじょうで寿命ずくなら仕方もねえわけだが、その死んだのが丁度十七の年で、せんのお安という娘と同い年だ。お安も十七で死んだ。お清も十七で死んだ。こうなるとちっとおかしい。
半七捕物帳:16 津の国屋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
其様そんな事を云ったって人は老少不定ろうしょうふじょうだ、それもちけえ処ではなし、信州とか何とか五十里も百里もある処へ行くのだ、人間てえものは明日あすも知れねえ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
日清日露の戦友がドンドン死んで行くのである。老少不定ろうしょうふじょうとはいうものの、がいして元帥げんすい大将たいしょう中将と古参順に訃音ふいんが来る。これは勢い仕方がない。お祖父さんもく認めている。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
老少不定ろうしょうふじょうと申して、悲しいことでございます、長らく皆様の御贔屓ごひいきになっておりました茂太郎が死にました……お驚きなさるのも御尤ごもっともでございます、皆様がお驚きなさるより先に、私が驚きました
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
夫婦は其の初見しょけんに在りと、初見参しょけんざんおりしかと申し聞ける事は、わしより母の機嫌を取り能く勤めてくれんではならぬ、又人間は老少不定ろうしょうふじょうということがある
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
多「それまアたのしみにするだが、あんた昨宵ゆうべも人間は老少不定ろうしょうふじょうだなんていわれると心持よくねえからね」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
叔父さん人間は老少不定ろうしょうふじょうということがあるから、若い者でも先へかねえと堅い事も言われねえ、わしが高平までみちで、どんな事があって、ひょっとけえらねえようになり
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
し其の花車が死んでいたらうする、人間は老少不定ろうしょうふじょうじゃから、昨日きのう死にましたといわれたら何うする、人間の命は果敢はかないものじゃが、あゝ仕方がない、くなら往けじゃが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
弟子師匠の縁が切れてみりゃア詫言わびことをする訳もねえからね、人は老少不定ろうしょうふじょうで、年をとった親方いゝや、清兵衛さんよりわっちの方が先へくかも知れませんから、ひとあてにするのア無駄だ
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)