練衣ねりぎぬ)” の例文
脊丈のほどもおもわるる、あの百日紅さるすべりの樹の枝に、真黒まっくろ立烏帽子たてえぼし鈍色にぶいろに黄を交えた練衣ねりぎぬに、水色のさしぬきした神官の姿一体。
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ここの大池の中洲の島に、かりの法壇を設けて、雨を祈ると触れてな。……はかま練衣ねりぎぬ烏帽子えぼし狩衣かりぎぬ白拍子しらびょうしの姿がかろう。
伯爵の釵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
こゝの大池おおいけ中洲なかすの島に、かりの法壇を設けて、雨を祈ると触れてな。……はかま練衣ねりぎぬ烏帽子えぼし狩衣かりぎぬ白拍子しらびょうしの姿がからう。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
鎌倉時代の上﨟じょうろうにや、小挂こうちぎしゃんと着こなして、練衣ねりぎぬかずきを深くかぶりたる、人の大きさの立姿。こぼるる黒髪小袖のつま、色も香もある人形なり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
亀姫、振袖、裲襠うちがけ、文金の高髷たかまげ、扇子を手にす。また女童、うしろに守刀まもりがたなを捧ぐ。あとおさえに舌長姥、古びて黄ばめる練衣ねりぎぬせたるあかはかまにて従いきたる。
天守物語 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ひやひやと練衣ねりぎぬの氷れるごとき、筒井筒振分けて、丈にも余るお妙の髪に、左手ゆんでそっと掛けながら、今はなかなかに胴据どうすわって、主税は、もの言う声もたしか
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
天守の千畳敷へ打込んだ、関東勢の大砲おおづつが炎を吐いて転がる中に、淀君をはじめ、夥多あまたの美人の、練衣ねりぎぬくれないはかま寸断々々ずたずたに、城と一所に滅ぶる景色が、目に見える。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
濃かりし蒼空あおぞらも淡くなりぬ。山のに白き雲起りて、練衣ねりぎぬのごときつややかなる月の影さしめしが、いたるよう広がりて、墨の色せるいただきつらなりたり。山はいまだ暮ならず。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
見る見るうちに数がえて、交って、花車を巻き込むようになると、うっとりなすった時、緑、白妙しろたえ紺青こんじょうの、珠を飾った、女雛めびなかぶる冠を守護として、はかま練衣ねりぎぬの官女が五人
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
練衣ねりぎぬ小袿こうちぎくれないはかま、とばかりでは言足らぬ。
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)