素的すてき)” の例文
ねえ君、だからソバケーヴィッチなんかすっぽかしちまってさ! おれんちへ行こうよ! 素的すてきな蝶鮫の乾物を御馳走するぜ。
…………今日は誰も来ないと思ったら、イヤ素的すてきな奴が来た。蘭麝らんじゃかおりただならぬという代物しろもの、オヤ小つまか。小つまが来ようとは思わなかった。
(新字新仮名) / 正岡子規(著)
「なんて素的すてきな町だろう。阿弗利加趣味と西欧趣味とがう旨く調和しているなんて、なんて素的な町だろう!」
死の航海 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
道坂まで行くと素的すてきに冷い水が湧いているというので、南日君は長い脛を飛ばして、サッサと先へ行ってしまう。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
その時己は彼の女の顔に、更に二つの素的すてきに大きい黒い宝石が輝くのを一べつした。二つの大きい黒い宝石と云うのは、それは彼の女の眼球めだまのことである。
小僧の夢 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「ジャンダルムっての、あら素的すてきな岩壁ね、アンザイレンしましょうよ! そしてトラヴァースしてみない?」
案内人風景 (新字新仮名) / 百瀬慎太郎黒部溯郎(著)
「それ、ウオツカと乾葡萄ほしぶだうだぜ、露助め素的すてきな物をくれよつた。あの爺さんに分けるんだが、どうせびんごと此所こゝに置くから勝手に飲むが好いや。そら一寸やつて見ねえ。」
煤煙の匂ひ (新字旧仮名) / 宮地嘉六(著)
しかし、その素的すてきな眺望にも増して、私の眼をそばだたせたのはその八畳と四畳半の二間きりのちんのような小住宅こじゅうたくに、どうして引上げられたのか、見事な黒光りをもったピアノが一台
腐った蜉蝣 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
龜甲屋の旦那が来い/\というが、今まで一度も行かなかったが、忘れて行ったものを黙って置いちゃア気が済まねえから、持って云ってほうり込んで来たが、柳島のうち素的すてきに立派なもんだ
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「どうも素的すてきな香だ、何でもいはつきの物に相違ない。」
収 いいんですよ、そりゃ、素的すてきじゃありませんか。
みごとな女 (新字新仮名) / 森本薫(著)
素的すてきだ。——それであれはその後どうですか」
故郷 (新字新仮名) / 魯迅(著)
その俳優やくしゃというのが又素的すてきだ。
火星の芝居 (新字新仮名) / 石川啄木(著)
やあ! 素的すてきだなア!
それに反して多四郎は、この素的すてきもない黄金を自分一人でせしめたいものだと魂胆こんたんを巡らしているのであった。多四郎は四方を見廻したがグイと懐中ふところへ手を入れた。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
兼「ムヽ橋本屋だ、彼家あすこで喰っためばる煮肴にざかな素的すてきに旨かったなア」
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「どれ拙者にも見せてくれ。あッ、なるほど。これは素的すてき。女であろう、変装した女」
剣侠受難 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「六文六文と馬鹿には出来ねえ、昨夜ゆうべ買った六文なんか、そりゃあ素的すてきな味だった」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)