籾殻もみがら)” の例文
旧字:籾殼
それから赤絵に使うきんは、どうしてやるのか忘れたが、とにかく焼き上った時は鈍い黄色をしている。それを籾殻もみがらで力一杯こするのである。
九谷焼 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
図457は高さ三フィートの奇妙な扇で、米から塵を煽ぎ出したり、あるいは穀物から籾殻もみがらあおりわけたりするのに使用する。
店の前の椅子に劉任瞻が腰かけて、小笊こざる[#「小笊こざる」は底本では「小※こざる」]に盛った穀物を両手に揉んでは、笊を揺すって籾殻もみがらを吹いている。
用いる釉薬うわぐすりは他に例がなく、珊瑚礁さんごしょうから得られる石灰と籾殻もみがらとを焼いて作ります。おっとりした調子で、白土の上にでも用いますと、支那の宋窯そうようを想わせます。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
ところどころ籾殻もみがらであおっている。鶏は喜んであっちこちこぼれた米をひろっている。子供が小流で何か釣っている。「ふなか。」「ウン。」精の友達らしい。
鴫つき (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
いつまでも、れない籾殻もみがらの煙や米の焼ける匂いが野をつつんでいた。ゆうべから夜明けにかけてようやく占領した部落に、織田軍の本部はもう移っていた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
知人が言うには、此の壁は土に籾殻もみがらを混ぜて塗ったのでう丈夫に出来たのであると答えた。
愚かな男の話 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
実際米粒はどれもこれも女優のやうに籾殻もみがらといふ外套を着てゐた。吉兵衛氏は陽気に笑つた。
いや、話していないどころか、あたかも蟹は穴の中に、臼は台所の土間どまの隅に、蜂は軒先のきさきの蜂の巣に、卵は籾殻もみがらの箱の中に、太平無事な生涯でも送ったかのようによそおっている。
猿蟹合戦 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
旧き己は火に投げ入れて焼かれる籾殻もみがらのようなものであって、審判に耐えざるものである。新たに生きるためには、旧き己に死なねばならぬことを象徴せられたにほかならないのです。
キリスト教入門 (新字新仮名) / 矢内原忠雄(著)
などという句があるから、当時すでにこの「地がら」をもそうっていたのである。次には挽木ひきぎを取附けた籾摺臼もみすりうす、是は籾殻もみがらを出すので殻臼だなどと謂う説もあるが、根っから当てにはならない。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
どこのうちでも、主人が家庭にばかりんでゐると、女房かないの多くはすべてそれを物足りなく思つて、どうかして亭主を籾殻もみがらか何ぞのやうに門口かどぐちから外に掃き出す工夫はないものかと
あじわおおい宋窯そうように近いものがあり、有名な犬山等より一段といい。大体釉薬うわぐすりに特色があり、珊瑚礁さんごしょう籾殻もみがらとを焼いて作り、独特の柔味やわらかみを見せる。この釉薬こそは壺屋の大きな財産といえよう。
現在の日本民窯 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
まき籾殻もみがらの散らかっている隅の暗がりから、途方もない大声でいう者がある。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同じ都会人にもで振る籾殻もみがらのように風に吹き寄せられる人種もあれば、粘り撓みしながらも最後の一筋だけは頑強に根付く人種もあり、どうしても蝶ちゃんは後の人種だと言ったのを、うわの空で
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)