ぱな)” の例文
ちょうど欧洲大戦のショッぱなで、青島チンタオから脱け出した三千六百噸の独逸ドイツ巡洋艦エムデンが、印度近海を狼みたいに暴れまわっている時分のことだ。
焦点を合せる (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しかし下町の目抜と山の手のぱなとは地価のけたが違う。新太郎君の家も、二百坪足らずだが、日本一の銀座の地主さんだ。悲観することはない。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
表からやみくもに跳込んできた安吉やすきち、お天気安という綽名あだなのある若い者だ、——ちょうどいま上りっぱなで、愛用の鳶口とびくちを磨いていたは組の火消し頭佐兵衛さへえ
初午試合討ち (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
大川おほかははうへそのぱなに、お湯屋ゆや煙突えんとつえませう、ういたして、あれが、きりもやのふかよるは、ひとをおびえさせたセメント會社ぐわいしや大煙突だいえんとつだからおどろきますな。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その藤葛が横に靡けば、前岸かわむこうそばだったたいらかな岩のぱなに往かれそうである。彼はそれに眼をつけた。
仙術修業 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
大きい声では言へないが、一体女はしよぱなから拍子に合つたやうに拵へられてはゐないのだから。
とツぱなに、義雄の亡友で、ここの主人の弟で、お宮さんのもとの所天をつとが張りつけてある。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)