秋口あきぐち)” の例文
かすかな暗示が津田の頭にひらめいた。秋口あきぐちに見る稲妻いなずまのように、それは遠いものであった、けれども鋭どいものに違なかった。それは父の品性に関係していた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しかし、野見さん父子はさっぱりしたもので、これが興業ものにはありがちのことで、一向悔やむには当りません。いずれ、秋口あきぐちになって、そろそろ涼風すずかぜの吹く時分一景気附けましょう。
秋口あきぐちになるほど追ひ/\寸が伸びるのであるが、小さいうちは塩焼にもフライにも都合が悪いので、素焼きにして二杯酢に漬け、苼莪しょうがを刻んだのをかけて、骨ごと食べるより仕方がない。
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)
みのるが詰めて稽古に通ふ樣になつた時はもう冷めたい雨の降りつゞく秋口あきぐちになつてゐた。雨の降り込む清月の椽に立つて、べろ/\した單衣一枚の俳優たちが秋の薄寒さをかこつ樣な日もあつた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
くさのまゝです……近頃ちかごろまでに、四五してひとがありましたけれども、ふものか住着すみつきませんから、べつ手入ていれもしないので、貴女あなたのおものずきのまゝにのこつてます、……秋口あきぐちには
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
華々しい秋口あきぐちの烈しい日照り
展望 (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
なにしろ秋口あきぐちからふゆけてしぎなぞをちにくと、どうしてもこしからしたなかつかつて、二時間じかんも三時間じかんらさなければならないんですから、まつた身體からだにはくないやうです
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
秋口あきぐちになるほど追い追い寸が伸びるのであるが、小さいうちは塩焼にもフライにも都合が悪いので、素焼きにして二杯酢にけ、苼莪しょうがを刻んだのをかけて、骨ごと食べるより仕方がない。
猫と庄造と二人のおんな (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
鰺も鰯も夏の間は長さ一寸いっすんぐらゐのもので、秋口あきぐちになるほど追ひ/\寸が伸びるのであるが、小さいうちは塩焼にもフライにも都合が悪いので、素焼きにして二杯酢に漬け、苼莪しょうがを刻んだのをかけて
猫と庄造と二人のをんな (新字旧仮名) / 谷崎潤一郎(著)