着更きが)” の例文
第一装だいいっそうのブレザァコオトに着更きがえ、甲板かんぱんに立っていると、上甲板のほうで、「ふかれた」とさわぎたて、みんなけてゆきました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
山根省三は洋服を宿の浴衣ゆかた着更きがえて投げだすように疲れた体を横に寝かし、隻手かたて肱枕ひじまくらをしながら煙草を飲みだした。
水郷異聞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
お城から帰った時、自分はこの部屋で着更きがえをして、その節、確かに差していた二刀を抜き取って、いつものようにそばで世話をしていたおくに渡した。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
「さあ、いい子だから、おとなしく着更きがえをするんだよ。ずそのバッチイのをぬいでと……」
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ビュロオ伯は常の服とおぼしき黒の上衣うわぎのいとひろきに着更きがへて、伯爵夫人とともにここにをり、かねて相識れる中なれば、大隊長と心よげに握手し、われをも引合はさせて
文づかひ (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
なに一つ紛失してもいなければ、触れた形跡さえないので、ほっとして寝室へ帰ると、美しいフォン・リンデン伯爵夫人が、強烈なイットを発散させながら寝巻に着更きがえていた。
戦雲を駆る女怪 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
しかし、笠一つ、剣一腰で、時雨しぐれに会っても、着更きがえさえも持たない武芸者もある。
剣の四君子:03 林崎甚助 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
五条通いの変装のために作らせた狩衣かりぎぬ着更きがえなどして源氏は出かけたのである。
源氏物語:04 夕顔 (新字新仮名) / 紫式部(著)
わたしより歳一つ上のお夏呼んでやってと小春の口から説き勧めた答案が後日のたたり今し方明いて参りましたと着更きがえのままなる華美姿はですがた名は実のひんのお夏が涼しい眼元に俊雄はちくと気を
かくれんぼ (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
けれども私は小諸の質素も一種の形式主義に落ちているのを認める。私は、他所よそで着て来たやわらか物を脱いでそれを綿服に着更きがえながら小諸に入る若い謀反むほ人のあることを知っている。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
子供たちが場内の整理や、着更きがえなどに小止こやみもなく動きまわっている間、テントばりの父兄席では、そこここに楽しい交歓が行われ、はしゃいだ話声や、賑やかな笑い声が雲のように湧きあがっていた。
霧の蕃社 (新字新仮名) / 中村地平(著)
口惜くやしさから、ほとんど飯も食べずに、トレイニング・パンツに着更きがえ、だれもいないB甲板をうろついていると、ひょッくりあなたと小さい中村じょうに逢いました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
とお俊は母に挨拶あいさつした。お延も従姉妹の側で新しい浴衣ゆかた着更きがえた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ここで着更きがえをしたのではありませんか」
暗黒星 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
と娘は母に言いながら、寝衣ねまき着更きがえたり、帯をしめたりした。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)