白黒しろくろ)” の例文
「うたれたのです……。弾丸たまにあたったのです……。」と、すずめは、ふくれながら、を、白黒しろくろさして、あわれなこえこたえた。
温泉へ出かけたすずめ (新字新仮名) / 小川未明(著)
ぼうさんは「あっ。」といったなり、しばらくこしかして目ばかり白黒しろくろさせたままがることもできませんでした。
安達が原 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
かの鵞鳥がてうこゑ婦人ふじんくちあんぐり、眞赤まつかになつて白黒しろくろにしてる、さだめて先刻せんこく失言しつげんをば後悔こうくわいしてるのであらう。
生残った戯作者の遺物どもは法燈再び赫灼として輝くを見ても古い戯作の頭ではどうようもなく、空しく伝統の圏内に彷徨して指をくわえて眼を白黒しろくろする外はなかった。
血のみた山刀を振り廻して金蔵は眼を白黒しろくろ、苦しまぎれにお豊の名を呼びながら無茶苦茶に飛びかかって山刀で鍛冶倉の面を斬る。鍛冶倉は左の脇腹わきばらを刺されている。
持せしは藤井左京さきやうなり少しはなれて白黒しろくろ摘毛つみげの鎗を眞先まつさき押立おしたて麻上下あさがみしもにて馬上なるは赤川大膳にて今日の御供頭おともがしらたり右の同勢堂々だう/\として渡邊橋の旅館を立出たちいでしたに/\と制しをなし御城代の屋敷やしき
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それよりももっとよろこばれたのは白黒しろくろ大豆だいずったの、つぎには蚕豆そらまめという大粒の豆などで、わたしたちの小さいころには菓子というものはべつにあって、これらを菓子とはいわなかったが
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
サア、賓客おきやくさん、もうくらくなりましたぜ、大佐閣下たいさかくかもひどくお待兼まちかねで、それに、夕食ゆふしよく御馳走ごちさう悉皆すつかり出來できて、料理方れうりかた浪三なみざうめが、とり丸燒まるやき黒焦くろこげになるつて、眼玉めだま白黒しろくろにしてますぜ。
主人が眼を白黒しろくろしたのも道理で、八王子までは六里からあります。