発端ほったん)” の例文
旧字:發端
レキレキレキ、ロクロクロク! ふもとをさして下って行く。薬草道人旅行の発端ほったん、新規の事件の湧き起こる、その前提の静けさである。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
さあ、それが事件の発端ほったんです。と云うのは、この植疱瘡については、乳母のお福が大反対で、牛の疱瘡を植えれば牛になると信じている。
半七捕物帳:56 河豚太鼓 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
まずこれを今の武蔵野の秋の発端ほったんとして、自分は冬の終わるころまでの日記を左に並べて、変化の大略と光景の要素とを示しておかんと思う。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
突然清逸の注意は母家おもやの茶の間の方にき曲げられた。ばかげて声高な純次に譲らないほど父の声も高くとがっていた。言い争いの発端ほったんは判らない。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それはわばこの物語の発端ほったんす所の、一挿話そうわに相違ないのだから、ここに簡単にしるして置くが、その時、舟は例の常盤木の蔭暗き岸辺に漂っていた。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それはともかく、この神秘な物語も、その発端ほったんは一見平凡な木見雪子きみゆきこ学士の行方不明事件から始まる。
四次元漂流 (新字新仮名) / 海野十三(著)
発端ほったんは恐怖であった。恐怖と歓喜と、これから起ころうとすることへの、驚愕きょうがくした好奇心とであった。夜がふけわたって、かれの官能はじっと様子をうかがっていた。
十年をひとむかしというならば、この物語の発端ほったんは今からふた昔半もまえのことになる。
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
「番頭さんが娘を若旦那の嫁に押付けるなんて、まるで御家騒動の発端ほったんみたいね」
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
するが、その発端ほったんはずっと古い。古いたって何も源平時代から説き出すんじゃないからそこは御安心だが、何しろ今から二十五六年前、ちょうど私の腰弁時代とでも云いましょうかね……
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
前に言った通り、この席には、銀杏加藤の奥方の身の上について、予備知識を持っている若手も多いことでしたから、勢い、それは最初の発端ほったんにまでさかのぼっての一代記にならないわけにはゆきません。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その智を誘い出す発端ほったんなければ、いつまでもその期あるべからず。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
異常な性格から発端ほったんして来ているらしく思われたのであった。
木魂 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
罪悪が発端ほったんなり。△中学世界買って来てよむ。△加藤帰京す。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
いつの間にかそれは、あの、騒動の発端ほったんの再演になっていた。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
これがのち二年にして秩禄ちつろくに大削減を加えられる発端ほったんであった。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
その発端ほったんは世にも恐ろしい「畳屋殺し」でした。
事の発端ほったん、以上であった。
紅梅の客 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
発端ほったん 如是我聞にょぜがもん
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
で、お粂と金兵衛との二人が、立ち去ったほうを見送ったが、以上を物語の発端ほったんとして、次回から序曲にはいることにしよう。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
芝居や小説でも御承知でしょう。この雨やどりという奴が又いろいろの事件の発端ほったんになるんですね。はははははは。
半七捕物帳:34 雷獣と蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
物語の発端ほったんけでも、私は二十回も、書いては破り書いては破りした。そして、結局、私と木崎初代きざきはつよとの恋物語から始めるのが一番穏当だと思う様になった。
孤島の鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
それと同時に須永すなが従弟いとこと仮定された例の後姿うしろすがたの正体も、ほぼ発端ほったんの入口に当たる浅いところでぱたりと行きとまったのだと思うと、その底にはがゆいようなまた煮切にえきらないような不愉快があった。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
さて「射撃手」事件の、そもそも発端ほったんは、次のようだった——
省線電車の射撃手 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そこまでが発端ほったんであった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男は二十五六の田舎者らしい風俗で、ふところに女の赤ん坊を抱いていた。それが、このお話の発端ほったんです
半七捕物帳:17 三河万歳 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
発端ほったん
二、〇〇〇年戦争 (新字新仮名) / 海野十三(著)
……そこの店で二枚目を張っているお駒という女が変死した。それがこのお話の発端ほったんです
半七捕物帳:31 張子の虎 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
これがこのお話の発端ほったんです
半七捕物帳:61 吉良の脇指 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)