疲労くたび)” の例文
旧字:疲勞
など話しながら、足は疲労くたびれても、四方あたりの風景のいのに気も代って、漸々ようよう発光路に着いたのがその日の午後三時過ぎでありました。
そして大変疲労くたびれて家に帰りました。宵のうちに、ちよつとお復習さらひをして(またあしたの朝お母さんに、笑はれては口惜しい)
目醒時計の憤慨 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
相手や、場合によってそうしなければならないこともあるでしょうが、始終そうやっていては誰だって疲労くたびれてしまいます。
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「今日はお墓参りに往って、疲労くたびれておりましょうから、もう、それにして置いて、あとは明日あすの晩にしてもらいましょう」
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
今日は退省後と見えて不断着の秩父縞ちちぶじま袷衣あわせの上へ南部の羽織をはおり、チト疲労くたびれた博多の帯にたもと時計のひも捲付まきつけて、手に土耳斯トルコ形の帽子を携えている。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
かぢ「それじゃア疲労くたびれてるだろうから、あの二畳へ往って木片こッぱを隅の方へ片付けて、薄縁うすべりを敷いてお
罪に喘ぐ小羊達は、ひざまずき、うなだれた頭を指で支えて、聖なる聖なる父の御名を疲労くたびれる迄くり返した。
反逆 (新字新仮名) / 矢田津世子(著)
盛んにバンドを奏しているうちに、突然指揮者が手を疲労くたびらせ、指揮棒を投げ出したのでございます。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
うむその沈着おちついていて気性が高くて、まだ入用ならば学問が深くて腕が確かで男前がよくて品行が正しくて、ああ疲労くたびれた、どこに一箇所ちというものがない若者だ。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
ようやく疲労くたびれて寝附いた貞之進は、いつも上二小間のはずの窓の障子へ一面日の当った頃目を覚し、周章あわてゝ起きて筆立に入てあった楊子を取り、いそがわしく使いかけたのがだん/″\緩くなって
油地獄 (新字新仮名) / 斎藤緑雨(著)
「昨夜何時頃だったろう。うちで寝たのは十一時だったが、俺は疲労くたびれていたもんだから、ぐっすりねむってしまって、何にも知らなかった。お前は夜中に二三度起きたようだったが、何にも気がつかなかったかね」
秘められたる挿話 (新字新仮名) / 松本泰(著)
「うんフラフラになる程疲労くたびれちまったよ」
空襲下の日本 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この麹町の裏店に住む独身ひとり者は、近郷近在へ出て小間物の行商をやるのが本職で、疲労くたびれた時とか天気の悪い日とかでないと店の戸は開けなかった。
山姑の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
見ると、何か嵩張かさばる箱のようなものを背負しょって、額に汗をいて大分疲労くたびれたていである。
同じ日の夕暮時、東京の自家うちの門をこつそりくゞつたのは、心身共にぐつたりと疲労くたびれた清一だつた。自家の中にはもう灯がいて、湯殿の方からは煙がムラ/\と立ち昇つてゐた。
清一の写生旅行 (新字旧仮名) / 牧野信一(著)
山の中程には大きな巌石がんせき屏風びょうぶを立てたようにそびえた処があった。宣揚はそこまでおりて来ると疲労くたびれて苦しくなって来たので、みちぶちのいわに腰をかけて休んでいた。
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「そんなに疲労くたびれはしないですけれども、……では、あとは明晩にいたしましょう」
悪僧 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「やれ、やれ、みな疲労くたびれたろう」
不動像の行方 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)