ばたけ)” の例文
みかんばたけの上に出ると、大池のつつみがみえました。そこに二十人くらいのてきが、手に手にかまを持っていました。草をかっていたのです。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
入口の庭には葡萄棚ぶどうだながあり裏には野菜ばたけのあるような田舎風の家で、岸本は巴里の方から来た主婦や主婦の姪と一緒に成った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
新堅町しんたてまち犀川さいがはきしにあり。こゝにめづらしきまちに、大衆免だいじめ新保しんぽかきばたけ油車あぶらぐるま目細めぼその小路せうぢ四這坂よつばひざか
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
「内儀の不心得ですよ。ガマ蛙のやうな六十の旦那より、三十五になつたばかりの、小意氣な敬吉どんが惡い筈はありません。三々九度で乘込んだ貞女ばたけの女とはワケが違ひまさア」
陸稻をかぼばたけ畔道あぜみちを、ごほんごほんと咳入せきいりながら、かな/\はどこへゆくのでせう。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
芍薬しゃくやく十坪とつぼあまり一面に植え付けられていたが、まだ季節が来ないので花を着けているのは一本もなかった。この芍薬ばたけそばにある古びた縁台のようなものの上に先生は大の字なりに寝た。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
武蔵野むさしの名残なごりを思わせるような、この静かな郊外の眺望の中にも、よく見れば驚くべき変化が起っていた。植木ばたけ、野菜畠などはドシドシつぶされてしまった。土は掘返された。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
秋谷明神と云う、その森の中の石段の下を通って、日向ひなたの麦ばたけ差懸さしかかると、この辺には余り見懸けぬ、十八九の色白な娘が一人、めりんす友染ゆうぜん襷懸たすきがけ、手拭てぬぐいかぶって畑に出ている。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
心平君たちがみかんばたけの下にきても、まだその音は聞こえていました。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
心平君しんぺいくんたちは、ひっそりして、みかんばたけの下に待っていました。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
「仙台は好かったよ。葡萄ばたけはある、梨畠はある……読みたいと思う書籍ほん何程いくらでも借りて来られる……彼処あすこへ行って僕も夜が明けたような気がしたサ……あれまでというものは、君、死んでいたようなものだったからね」
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)