男女おとこおんな)” の例文
殿下の行啓と聞いて、四千人余の男女おとこおんなが野辺山が原に集りました。馬も三百頭ではききますまい。それは源が生れて始めての壮観ながめです。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
まるで男女おとこおんな情間じょうあいなんてものはなさそうですけど、今だって何じゃありませんか、惚れたのはれたのと、欲も得も忘れて一生懸命になる人もあるし
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
虚無なんて事を考える女は、女として価値ねうちのない女でしょうか。同窓の人達は皆私を「火星の女」とか「男女おとこおんな」とか綽名を付けておられたようです。
少女地獄 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
むかしから男女おとこおんなの影法師は憎いものに数へられてゐるが、要次郎とおせきはその憎い影法師を土の上に落しながら、摺寄すりよるやうにならんであるいてゐた。
デュアック 愛蘭アイルランドが一国となり大国となるのは、いかなる王の力に依ってでもありません、ただ、その国民の男女おとこおんなの尊とさに依らなければなりません。
ウスナの家 (新字新仮名) / フィオナ・マクラウド(著)
おいらも、焼きがまわったよ——あんな男女おとこおんなみてえな奴にいのちまでもと惚れ込んだのも、只ごとじゃあなかったんだ——だが、じたばたしたってはじまらねえ。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
日光へでも行くらしい、男女おとこおんなの外国人の綺麗きれいな姿が、彼等の前をよこぎって行ったとき、お島は男に別れる自分の寂しさを蹴散けちらすように、そう云って、嘆美の声を放った。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
芳紀とし正に二八にはちながら、男女おとこおんな雌雄めおの浪、権兵衛も七蔵も、頼朝も為朝も、立烏帽子たてえぼしというものも、そこらのいわおの名と覚えて、崖に生えぬきの色気なし、なりにもふりにも構わばこそ。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お浪の家は村で指折ゆびおり財産しんだいよしであるが、不幸ふしあわせ家族ひとが少くって今ではお浪とその母とばかりになっているので、召使めしつかいも居ればやとい男女おとこおんな出入ではいりするから朝夕などはにぎやかであるが
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そいから綿貫のこと「男女おとこおんな」やとか「女男おんなおとこ」やとかいうようになったのんやそうですが、そないいわれる時分にはぷッつり遊び止めてしもて、何処のお茶屋いも姿見せんようになった。
(新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
お俊は、附添つけたして、母よりほかにこの事件を知るものがないと言った。その口振で、三吉には、親戚の間に隠れた男女おとこおんなの関係ということだけ読めた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
高崎では、そこからわかれて伊香保いかおへでも行くらしい男女おとこおんなの楽しい旅の明い姿の幾組かが、彼女の目についた。蓄音器をさげて父親をよろこばせに行った小野田が思出された。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
叔母の家に帰ることを許されたお春も、人に誘われて、この光景ありさまを見に行った。大きな輪を作って、足拍子そろえて、歌いながら廻って歩く男女おとこおんなの群。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
源は御茶番の側を通りぬけて、秣小屋まぐさごやの蔭まで参りますと、そこには男女おとこおんなの群の中に、母親、叔母、外に身内の者も居る。源の若い妻——お隅も草をいて。
藁草履 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
この祭には、近在の若い男女おとこおんなは言うに及ばず、遠い村々の旦那だんな衆まで集って、町は人で埋められるのが例で、その熱狂した群集の気勢ばかりでも、静止じっとしていられないような思をさせる。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
お雪の部屋には、生家さとから持って来た道具なども置かれた。大きな定紋の付いた唐皮からかわの箱には、娘の時代を思わせるような琴のつめ、それから可愛らしい小さな男女おとこおんなの人形なども入れてあった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
以前には戦争を記念する為の銅像もなく、高架線もなく、大きな建築物たてものも見られなかった万世橋附近へ出ると、こうも多くの同胞が居るかと思われるほど、見ず知らずの男女おとこおんなが広い道路を歩いている。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「そこがあの本居先生と違うところさ。本居先生の方には男女おとこおんなの恋とかさ、物のあわれとかいうことが深く説いてある。そこへ行くと、平田先生はもっと露骨だ。考えることが丸裸まるはだかだ——いきなり、生め、ふやせだ。」
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)