由緒よし)” の例文
いずれ由緒よしあるお身の上とは、最初から存じて居りましたが、そのような名家の遺兒わすれがたみとは、思い及びも致しませんでした。
血ぬられた懐刀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こちらは白虎山の由緒よしある旧家で、昼、おぬしが村の居酒屋で出会ったのはご舎弟のほうで独火星の孔亮こうりょうとよばれ、そちらはご総領の毛頭星の孔明こうめいと仰っしゃるお方だ
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ゆたかならぬ、生活くらし向きは、障子の紙の破れにも見え透けど、母なる人の木綿着ながら品格よきと、年若き息子の、尋常ならず母に仕ふるさまは、いづれ由緒よしある人の果てと。
野路の菊 (新字旧仮名) / 清水紫琴(著)
由緒よしある者の果てであろうことは、刀剣類に眼が肥えているのでも知れるし、茶筌髪ちゃせんがみのせいか、槍はさびても名はさびぬ、そういったような風格が閑山のどこかに漂っている。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
... 思ふに必ず由緒よしある身ならん、その素性聞かまほし」トありしかば。黄金丸少しもつつまず、おのが素性来歴を語れば。朱目は聞いて膝を打ち。「それにてわれも会得えとくしたり。 ...
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
女房は独り機嫌悪く、由緒よしなき婦人おんなを引入れて、蒲団ふとんは汚れ畳は台無し。鶏卵たまごの氷のと喰べさせて、一言ひとことの礼も聞かず。流れ渡った洋犬かめでさえ骨一つでちんちんおあずけはするものを。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
纒ひて其さまいやしげなれども昔し由緒よしある者なるかたち擧動ふるまひ艷麗しとやかにて縁側へ出擂盆すりばちの手水鉢より水をすくひ手にそゝぎしは縁のはし男は手をば洗ひながら見れば娘はたぐまれなる美女にて有れば是までは女を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
うんくるめくわがにも由緒よしありげなる謎の花。
有明集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
「だがさ、散所屋敷の方では、おまえ方夫婦を、よほど、由緒よしある者と、見ているらしいんだ」
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
はじかえでなんどの色々に染めなしたる木立こだちうちに、柴垣結ひめぐらしたる草庵いおりあり。丸木の柱に木賊もてのきとなし。竹椽ちくえん清らかに、かけひの水も音澄みて、いかさま由緒よしある獣の棲居すみかと覚し。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
山尾と右門はそれを聞くと、さては由緒よしある武士もののふ隠遁所かくれずまいででもあるのだろうと、忽ち、勇気を振り起こし、灯火を目差して進む時、鋭い矢声やごえ発止はっしと掛かり、ひょうと飛び来る白羽の矢。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
とにかく、醜男ぶおとこの方ではあるが由緒よしある家の子息ではあろう。いている太刀なども、こんな小酒屋の客には見ぬ見事な物と、亭主もさっきから、眼をみはっていた様子だった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(いずれ、由緒よしある若武者か、氏のよい公達きんだちかが鍾愛しょうあいしたものにちがいない)
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
よほど、由緒よしある旧家とみえる。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)