玩弄物おもちゃ)” の例文
……同じ事を、絶えず休まずに繰返して、この玩弄物おもちゃを売るのであるが、玉章ふみもなし口上もなしで、ツンとしたように黙っているので。
露肆 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其他に慰みとか楽みとかいって玩弄物おもちゃを買うて貰うようなことは余り無かったが、然し独楽と紙鳶とだけは大好きであっただけそれ丈上手でした。
少年時代 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
学校でく生徒が用いるのも御座いますけれども、斯様の幻燈は只々玩弄物おもちゃに取り、別段学問の為に功はなさんけれども、是れより勝れたる顕微鏡
探偵小説の「謎」 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
私の小供は彼を珍らしがって、がなすきがな玩弄物おもちゃにした。けれども名がないのでついに彼を呼ぶ事ができなかった。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたしは十九の時から三十まで十何年、いやでいやでたまらない人の玩弄物おもちゃになっていたのよ。よく辛抱しんぼうしたでしょう。自分ながら感心だと思う位なのよ。
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
天皇が神明に誓われた五箇条の誓文などは、彼らにとっては、一片の反古紙ほごがみにしかすぎなかったのである。そのころの天皇は、まったく無力であり、彼ら権勢者の玩弄物おもちゃにすぎなかった。
... 玩弄物おもちゃにしたのです」妻君「道理で上包うわづつみこしらえからおかしゅうございましたよ。 ...
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「白痴だと思ってこの子を玩弄物おもちゃにするにも程がある」
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
こうして人間の面をかぶっておればこそ、の、わしが顔を暴露むきだいたら、さて、一堪ひとたまりものう、ひげが生えた玩弄物おもちゃろうが。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これほど男の玩弄物おもちゃになるのに適当した女は恐らくあるまい。
夏すがた (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「白痴だと思ってこの子を玩弄物おもちゃにするにも程がある」
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
日あたりの納戸に据えた枕蚊帳まくらがやあおき中に、昼の蛍の光なく、すやすやと寐入ねいっているが、可愛らしさは四辺あたりにこぼれた、畳も、縁も、手遊おもちゃ玩弄物おもちゃ
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
机には、広げたままの新聞も幅をすれば、小児こども玩弄物おもちゃも乗って、大きな書棚の上には、世帯道具が置いてある。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「おらも乗ってきゃ小遣こづかいもれえたに、号外を遣ってもうけ損なった。お浜ッに何にも玩弄物おもちゃが買えねえな。」
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どの玩弄物おもちゃ欲しい、とわしが問うたでの、さきへ悦喜の雀躍こおどりじゃ、……這奴等しゃつら、騒ぐまい、まだ早い。殿たち名告なのらずば、やがて、ろう、選取よりどりに私がってろう!
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
孫等まごどもに人形の土産じゃがの、や、殿。殿たち人間の人形は、私等が国の玩弄物おもちゃじゃがの。
吉原新話 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
青い羽織を着ている吉公きちこうの目白だの、それからおやしきのかなりやの姫様ひいさんなんぞが、みんなで、からかいに行っては、花を持たせる、手拭てぬぐいかぶせる、水鉄砲をあびせるという、好きな玩弄物おもちゃにして
化鳥 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(可愛い人だな、おい、殺されても死んでも、人の玩弄物おもちゃにされるな。)
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
玩弄物おもちゃだのな、あめだのな、いろんなものを買って来るんだ。
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)