無情つれなし)” の例文
つくづく思へば無情つれなしとても父様ととさま真実まことのなるに、我れはかなく成りて宜からぬ名を人の耳に伝へれば、残れるはぢが上ならず、勿躰もつたいなき身の覚悟と心のうち詫言わびごとして
ゆく雲 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
目前まのあたりお蘭さまと物いふにつけて、分らぬ思ひは同じ處を行めぐり行めぐり、夢に見たりし女菩薩をお蘭さまとれば、今見るお蘭さまは御人かはりて、我れに無情つれなしとなけれど一重隔ての中垣や
暗夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
苔のしたにて聞かば石もゆるぐべし、井戸がはに手を掛て水をのぞきし事三四度に及びしが、つく/″\思へば無情つれなしとても父樣は眞實まことのなるに、我れはかなく成りて宜からぬ名を人の耳に傳へれば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
こけのしたにてかばいしもゆるぐべし、井戸ゐどがはにかけみづをのぞきしこと三四およびしが、つく/″\おもへば無情つれなしとても父樣とゝさま眞實まことのなるに、れはかなくりてからぬひとみゝつたへれば
ゆく雲 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
そこねもして愛想あいそづかしのたねにもならばはぬにまさらさぞかしきみさまこそ無情つれなしともおもこゝろに二不孝ふかうらねど父樣とゝさまはゝさまなんおほせらるゝとも他處よそほかの良人をつともつべき八重やへ一生いつしやう良人をつとたずとふものからとはおのづかことなりて關係かゝはることなく心安こゝろやすかるべし浦山うらやましやと浦山うらやまるゝわれ
五月雨 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)