為業しわざ)” の例文
旧字:爲業
その外非常な力のある奴の為業しわざだと云証拠がまだある。煖炉の縁の上にあつた髪の毛だね。白髪の毛が幾束も根こじに引き抜いてあつたのだ。
その上明日からは福知山の何倍もある大大名、京極丹後守の指南番大月玄蕃が宿の妻に出世するのじゃ——満更そちにむご為業しわざでもあるまいがの
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父はたちまち胸に動悸どうきをさせながら、これは、きりしたん伴天連ばてれん為業しわざであるから念力で片付けようと思つた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
……ひと為業しわざなら、同一おなじさぎぐにして、ふねひかりはなつて、ふわ/\くもなか飛行ひぎやうするだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
晒人さらしては男女ともうちまじり身をきよめる事織女おりめごとくす。さらすは正月より二月ちゆう為業しわざ也。
危険なる洋書が海を渡って来たのは Angraアングラ Mainyuマイニュウ の神の為業しわざである。
沈黙の塔 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
無礼にも主人の持っている家の掟を破る為業しわざだ。8785
あの赤い鳥の為業しわざだという事がわかりました。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
地金の真鍮板が積み重ったまま足もとへ崩れて来たり安全なニスとエーテルの混合液のザボンがいつの間にか危険な重クロムサンの酸液と入れ換えられていたりしているのが初めの間はこちらの過失だとばかり思っていたのにそれが尽く軽部の為業しわざだと気附いた時には考えれば考えるほどこれは油断を
機械 (新字新仮名) / 横光利一(著)
墨屋敷すみやしきを焼いたのはお綱の為業しわざでござるぞ。また、お千絵をああして奪ったのは万吉でござるぞ、よいか! そしてそれを傀儡かいらいしたやつは法月弦之丞ではないか。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
為業しわざ狂人きちがいです、狂人は御覧のごとく、浅間しい人間の区々たる一個のわたくしです。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
流の岸は人造石の堤防で堅めてゐるので、水は割合に激せずに流れるのであるが、それでもその堤防の損じた処がところどころにある。恐らく春の雪解ゆきどけの季節に洪水のする為業しわざであるだらう。
イーサル川 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
誰の為業しわざか、それが聞きたい。10605
悪魔の為業しわざか。
白髪小僧 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
「だが、多分あの女の為業しわざにちがいないと、あとで、みんなが噂しているのだ」
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
白糸は生まれてより、いまだかかる最期さいご愴惻あさましきを見ざりしなり。かばかりおびただしき血汐! かかるあさましき最期! こはこれ何者の為業しわざなるぞ。ここに立てるわが身のなせし業なり。
義血侠血 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
御隠家様のお心として、いかに月江様のお生命いのちが大切じゃとて、罪なき人の生き胆をとるのは余りにむごい為業しわざ、何かよい工夫はないかとお考えの末に、あの石神堂の穴が思いつかれたのです
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こりゃ、お前、赤熊の為業しわざだあね、あの、にしん野郎の。
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)