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潜門
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くぐりもん
ふりがな文庫
“
潜門
(
くぐりもん
)” の例文
旧字:
潛門
路地の内ながらささやかな
潜門
(
くぐりもん
)
があり、小庭があり、
手水鉢
(
ちょうずばち
)
のほとりには思いがけない椿の古木があって
四十雀
(
しじゅうから
)
や
藪鶯
(
やぶうぐいす
)
が来る。
花火
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「お前は
好
(
い
)
いから行け、泥坊なんぞになるものぢやあないぞ」と云つた。八は黙つて、お辞儀をして、太吉を尻目で見て、
潜門
(
くぐりもん
)
を出て行つた。
金貨
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
彼らがパンの切れを食い終わって、向こうにフォルス監獄の低いいかめしい
潜門
(
くぐりもん
)
が見える
陰鬱
(
いんうつ
)
なバレー街の
角
(
かど
)
まで達した時、だれかが声をかけた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
人間は傍の小さい
潜門
(
くぐりもん
)
から世を忍ぶものゝやうに不自由勝ちに出入するわが家のものは、無意識にもせよ、この質素な蔦を真実愛してゐるのだつた。
蔦の門
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
招魂社の裏手の知れ
難
(
にく
)
い
家
(
うち
)
で、車屋に散々こぼされて、
辛
(
やッ
)
と尋ね当てて見ると、門構は門構だが、
潜門
(
くぐりもん
)
で、国で想像していたような立派な
冠木門
(
かぶきもん
)
ではなかった。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
▼ もっと見る
これが
反対
(
あべこべ
)
だと、
旧
(
もと
)
の
潜門
(
くぐりもん
)
へ押出されます処でございました。強いて入りますほどの度胸はないので。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
驚いてもと来た横町に戻り、薄暗い電燈をたよりに、人家の軒下や
潜門
(
くぐりもん
)
の表札に番地を見定めながら、やっとの事で目的の家へ行きついた。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
八は暫く外の往来に気を着けてゐたが、此
邸
(
やしき
)
の外を通るものはない。そこで
潜門
(
くぐりもん
)
に手を掛けた。其時潜門はだしぬけに外から開けられて、中へ這入る男がある。
金貨
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
枯葎
(
かれむぐら
)
を手探りで、墓から迷って出たように、なお夢心地で、
潜門
(
くぐりもん
)
を——何となく
気咎
(
きとが
)
めがして——
密
(
そっ
)
と出ると、覚えた路はただ一筋、穴の婆さんのあたりに
提灯
(
ちょうちん
)
が一つある。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
金があるのにいつも
鍵
(
かぎ
)
をポケットに入れ
蝋燭
(
ろうそく
)
を門番の所に預けておくとか、
潜門
(
くぐりもん
)
から出入りするとか、裏の階段から上ってゆくとか、すべてそういう何でもなさそうな特殊の癖
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
またおしゃまな娘
美登里
(
みどり
)
の住んでいた大黒屋の寮なども大方このあたりのすたれた寺や、風雅な
潜門
(
くぐりもん
)
の家を、そのまま資料にしたものであろうと
里の今昔
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
黒い門の大きい扉はいつも鎖されてゐて、左側の小さい
潜門
(
くぐりもん
)
のやうな所を這入るのである。
田楽豆腐
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
彼らは明らかに何か相談せんためにその奥まった所を選んだのである。そこは通行人の目にもつかず、また数歩先にあるフォルス監獄、
潜門
(
くぐりもん
)
を番してる
歩哨
(
ほしょう
)
から見られもしなかった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
あとへ引返して、すぐ宮前の
通
(
とおり
)
から、小橋を一つ、そこも水が走っている、門ばかり、家は形もない——
潜門
(
くぐりもん
)
を押して入ると——植木屋らしいのが三四人、土をほって、運んでいました。
半島一奇抄
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
潜門
(
くぐりもん
)
の板屋根には
痩
(
や
)
せた柳が
辛
(
から
)
くも若芽の緑をつけた枝を
垂
(
たら
)
している。冬の昼過ぎ
窃
(
ひそ
)
かに
米八
(
よねはち
)
が病気の
丹次郎
(
たんじろう
)
をおとずれたのもかかる
佗住居
(
わびずまい
)
の
戸口
(
とぐち
)
であったろう。
すみだ川
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
二人の婆に
挟
(
さしはさ
)
まれ、
一人
(
いちにん
)
に導かれて、薄墨の絵のように、
潜門
(
くぐりもん
)
を連れ出さるる時、夫人の姿は
後
(
うしろ
)
ざまに反って、肩へ顔をつけて、振返ってあとを見たが、名残惜しそうであわれであった。
悪獣篇
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
新太郎は教えられた
潜門
(
くぐりもん
)
の家を見て、あの家なら気がつかずに初め一度通り過ぎたような気もした。
羊羹
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
打込んだ門の柱には□□
寓
(
ぐう
)
とした表札まだそのままに新しく
節板
(
ふしいた
)
の合せ目に
胡麻竹
(
ごまだけ
)
打ち並べた
潜門
(
くぐりもん
)
の戸は
妾宅
(
しょうたく
)
の常とていつものように外から内の見えぬようにぴったり閉められてあった。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
今までひろびろしていた堀端の眺望から
俄
(
にわか
)
に変る道幅の狭さに、鼻のつかえるような気がするばかりか、両側ともに
屋並
(
やなみ
)
の
揃
(
そろ
)
わない小家つづき、その間には
潜門
(
くぐりもん
)
や
生垣
(
いけがき
)
や
建仁寺垣
(
けんにんじがき
)
なども
交
(
まじ
)
っているが
つゆのあとさき
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
潜
常用漢字
中学
部首:⽔
15画
門
常用漢字
小2
部首:⾨
8画
“潜門”で始まる語句
潜門扉