江尻えじり)” の例文
大工らしい印絆纒しるしばんてんの男が一人、江尻えじりあたりの海を見ながら、つれの男にかう言つてゐた——「見や。浪がチンコロのやうだ。」
貝殻 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
江尻えじりの宿のはずれで名乗りかけることにしておいたのを、お前様方が久能山道へお廻りなすったものですから
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
力に伏拜ふしをが江尻えじりの宿や興津川おきつがは薩陲峠さつたたうげは七ツ過手許てもとくらき倉澤のあひの建場を提灯つけ由井の宿なる夷子屋えびすやに其夜は駕籠を舁込かきこんだり斯て藤八宿屋のあるじ委細ゐさいの樣子を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
それから清水港しみづみなととほつて、江尻えじりると、もう大分だいぶん以前いぜんるが、神田かんだ叔父をぢ一所いつしよとき、わざとハイカラの旅館りよくわんげて、道中繪だうちうゑのやうな海道筋かいだうすぢ町屋まちやなか
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
武田方にとって重要な南方の要衝ようしょう、駿河口の江尻えじりの城をあずけてあるその梅雪が、ここ半年以上も伺候せず、何があっても病気と称して出て来ない心配からであった。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
改むるに巴屋ともゑや儀左衞門樣と云書状二三通外に買物樣かひものやう手控小帳てひかへこちやうあり依て小松屋より駿府町奉行桑山下野守殿へ訴へければ支配内しはいうちなるにより先江尻えじり宿の巴屋儀左衞門を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
靜岡しづをかから、すぐに江尻えじり引返ひきかへして、三保みほ松原まつばら飛込とびこんで、天人てんにん見參けんざんし、きものをしがるつれをんなに、羽衣はごろも瓔珞えうらくをがませて、小濱こはま金紗きんしやのだらしなさを思知おもひしらさう、ついでに萬葉まんえふいんむすんで
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
耳にはさみ神奈川より付て參り江尻えじりに於て其侍士さふらひを切殺し金銀きんぎん諸品しよしなうばひ取候と申立ければいさぎよき白状神妙しんめうなり又幸之進かうのしんを殺せしはたれにて馬士まごを殺たるは誰なるやとたづねられしに幸之進を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)