正体しやうたい)” の例文
旧字:正體
が、ではない。ばさりととなへたはおとで、正体しやうたい二本にほん番傘ばんがさ、トじやひらいたはいゝが、古御所ふるごしよすだれめいて、ばら/\にけてる。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
僕にも時々夏目なつめ先生の書を鑑定かんていしてくれろと言ふ人がある。が、僕の眼光ではどうも判然とは鑑定出来ない、唯まつ赤なせものだけはおのづから正体しやうたいを現はしてくれる。
続澄江堂雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
うかしたか、おうら。はてな、いまころんだつて、したへはおとさん、怪我けが過失あやまちさうぢやない。なんだか正体しやうたいがないやうだ。矢張やつぱ一時いちじ疲労つかれたのか。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
おゝ、ふねいたは貴様きさまだな。それろ、それろ。うぬ魔物まもの山猫やまねこか、狒々ひゝか、きつねか、なんだ! 悪魔あくま女房にようばううばつたやつ。せめて、おれに、正体しやうたいせてくれ。一生いつしやう思出おもひでだ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)