款待かんたい)” の例文
そしてわれわれはごく自然に禁欲を実施した。それは決して款待かんたいに対する違反ではなく最も適当で思慮あるやりかただと感じられた。
げろ呑みにして早く生きたいようにも見えまたやっぱりつかれてもいればこういう款待かんたいあたたかさをかんじてまだ止まっていたいようにも見えた。
十六日 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
款待かんたいの厚薄によって武塔むとう天神に賞罰せられた話、世くだっては弘法大師が来って水を求めた時、悪いうばはこれをいなんで罰せられ
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
遊行女婦うかれめは作歌することが一つの款待かんたい方法であったのだから、このくらいのものは作り得たと解釈していいだろうか。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
到底左大臣を満足させる程の款待かんたいをなし得ないのを、はずかしくも歯痒はがゆくも感ずる念が一杯であった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
そう思い立つと私は矢も楯もたまらず、インゲマンのもとへ走りました。インゲマンは私の不意の訪問を驚くと共にまた喜んでくれて、親切に心から款待かんたいしてくれました。
聖アンデルセン (新字新仮名) / 小山清(著)
同時に、久々な城主の来訪でもあったので、寺中をあげて款待かんたいにつとめたことはいうまでもない。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奥さんが夕食の支度をして待っていた。款待かんたい至らざるところない。清水君としては円満ぶりを見せつける野心もあったろうけれど、無論後輩に対する親切心も動いていた。
冠婚葬祭博士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
アアかかる款待かんたいを受けながら、妾が将来は如何いかに、重井おもいひそかに結婚を約せるならずや、そも妾は如何にしてこの厚意に報いんとはすらんなど、人知れずもだえ苦しみしぞかし。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
款待かんたいを受けることを当然と心得ている世界漫遊者も、わたしの記憶しているだけでは、だいぶ遠慮がちになってきてはいるが、それでも今日こんにちなお、諸君が知識階級に属していて
鄭は款待かんたいして泊っていかした。阿霞は客をのぞいて景を見つけ、それを憐んで鄭に訊いた。
阿霞 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
こうして一家の人々から款待かんたいされて、澹山の方でもひどく喜んで、自分の居間として貸して貰った離れ座敷を画室として、ここでゆっくりと絵絹や画仙紙をひろげることになると
半七捕物帳:33 旅絵師 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
三渓園の原邸では、招待して待ち受けてでもいたかのように、款待かんたいをうけた。
漱石の人物 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
下へも置かぬ款待かんたいを受けながら、それらの不動産なり、営利事業なりを、どうすれば、最も有利に処分し、換金することが出来るか、その処分の順序は、どれを先きにし、どれを後にすれば
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
海軍と陸軍とは固より事情を殊にし習慣を異にするもの同一に論ずべからずといへどもしかも海軍の款待かんたいの至れるわれらをして上天の想ひあらしめたり。有形上の待遇はここにも論ずるを用ゐず。
従軍紀事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
心から義朝を款待かんたいするように見せかけたというのである。
俳句はかく解しかく味う (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
金蔵の番人には、チト行きすぎたお款待かんたい
顎十郎捕物帳:16 菊香水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「ひとつ款待かんたいにあずかろうかね」
款待かんたいは氷のようにつめたかった。かれらを冷やすために氷の入用はないとわたしは思った。かれらは酒の年代や製造元の名声についてわたしに語った。
豊かな家庭でも款待かんたいの意味で、主婦が出て世話を焼くのは、質素な東北の旧家の慣例ではあるが、そのためばかりでないことはたやすく想像しえられた。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
このまま死すも残り惜しき事なし、かくまで諸氏の厚遇に預かり、市民に款待かんたいせられんことは、思い設けぬ所なりしといいつつも、故中江兆民なかえちょうみん先生、栗原亮一くりはらりょういち氏らの厚遇を受け給いぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
妙子を下へも置かぬような款待かんたいぶりで、義兄は今朝も出がけに、こいさん折角来たのだから、今度はゆっくりして行ってくれ、狭い所で気の毒だけれども今は雪子ちゃんが留守だから
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
亭主方ていしゅがたは勿論いるのをもって款待かんたいの表示としておって、勧め方が下手へただと客が不満を抱く。だから接伴役にはできるだけ大酒飲みが選抜せられ、彼らの技能が高く評価せられる。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
又今度の日曜には橋寺氏父子おやこを御招待になったそうであるが、どうか皆さんで十分に款待かんたいして上げて下さい、分けて雪子さんは、最初に与えた「陰気」と云う印象をぬぐうように努めて戴きたく
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
これなどは明らかに一種急性の中毒症状なのだが、或いは主人側の款待かんたいが是ほどまでに徹底して効を奏したという証拠のごとくにも解釈せられ、もとはこの介抱だけは眉をひそめる人もなく
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
吸物・あつ物をぜんの上に添えることが、款待かんたいのしるしとなったのもその結果で、他の民族でも同じことかと思うが、日本の食物が近世に入って、次第に温かいものまたは汁気しるけのものを多くしたのも
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
それにはこの器物の金属としての新しい趣味も加わって奥羽の各地のごとく夏の土用の炎天でも、客がくるとまず第一着に、センバを持ち出すのをもって款待かんたいの表示とするようになったものかと思う。
雪国の春 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
女ばかりで款待かんたいしたというから演技ではない。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
連れて行かれて大へんな款待かんたいを受ける。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)