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槲
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かしわ
ふりがな文庫
“
槲
(
かしわ
)” の例文
夕方、森のなかで、ぎっしりかたまって眠り、
槲
(
かしわ
)
の一番てっぺんの枝がその彩色した果実の重みで今にも折れそうになるにしても——
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
最もよき場所は
畔
(
あぜ
)
を越えたるところに在り、とモルガンは指さして教えたれば、われらは低き
槲
(
かしわ
)
の林をゆき過ぎて、草むらに沿うて行きぬ。
世界怪談名作集:04 妖物
(新字新仮名)
/
アンブローズ・ビアス
(著)
だが、彼を追うているのは、ただ一条の陽の光りだけで、それが
槲
(
かしわ
)
の隙葉から洩れているにすぎない。それを滝人は
瞬
(
またた
)
きもせずに
瞶
(
みつ
)
めていた。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
白樺
(
しらかんば
)
の下葉は最早落ちていた。枯葉や草のそよぐ音——殊に
槲
(
かしわ
)
の葉の鳴る音を聞くと、風の寒い、日の熱い高原の上を旅することを思わせる。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
羊毛のような糸杉のまわりや、光線に貫かれてる黒い光った
槲
(
かしわ
)
の木立の間に、情を含んで笑ってるローマの空の中にも、彼女の眼を見てとった。
ジャン・クリストフ:12 第十巻 新しき日
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
▼ もっと見る
庭には綺麗に刈り込んだ芝原と、塔のように突っ立った
槲
(
かしわ
)
や
楡
(
にれ
)
の木があって、ほかにも所どころに木立ちが茂っていた。
世界怪談名作集:17 幽霊の移転
(新字新仮名)
/
フランシス・リチャード・ストックトン
(著)
画面の左上のほうに枝の曲がりくねった
闊葉樹
(
かつようじゅ
)
がある。この枝ぶりを見ていると古い記憶がはっきりとよみがえって来て、それが
槲
(
かしわ
)
の木だとわかる。
庭の追憶
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
私は小刀で、彼はフウイヌムの斧を使って、
槲
(
かしわ
)
の枝を幾本も切り落しました。それを私はいろ/\に細工しました。
ガリバー旅行記
(新字新仮名)
/
ジョナサン・スウィフト
(著)
ところが岩手県では
閉伊
(
へい
)
郡の北端に、
普代
(
ふだい
)
の官有林というのが海に臨む段丘の上にあって、広大な
槲
(
かしわ
)
林であった。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
槲
(
かしわ
)
の大樹らしいのが、まばらまばらに立っていて、その細い枝が網のように空に交錯しながら伸びていた。
荒野の冬
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
蝋燭の火をたよりにそこらを検査すると、おなじ型の家具——三脚の椅子、一脚の
槲
(
かしわ
)
の木の長椅子、一脚のテーブル、それらはほとんど八十年前の形式の物であった。
世界怪談名作集:02 貸家
(新字新仮名)
/
エドワード・ジョージ・アール・ブルワー・リットン
(著)
山林の
槲
(
かしわ
)
の木はたとえその木の年寿が若くともそこらに生い茂る雑草や灌木よりは偉大であるように、十六の平一郎は無意識に内より湧く生命のままに生きて来たが
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
この
偃地
(
えんち
)
性の小灌木は、茎の粗い皮を、岩石に擦りつけるようにしている、
槲
(
かしわ
)
に似て、小さい、鈍い、鋸の歯のように縁を刻んだ葉を、
眼醒
(
めざ
)
めるように鮮やかな緑に色づけて
白峰山脈縦断記
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
天
(
そら
)
は
先刻
(
さっき
)
から薄暗くなっていたが、サーッというやや寒い風が
下
(
おろ
)
して来たかと見る
間
(
ま
)
に、
楢
(
なら
)
や
槲
(
かしわ
)
の黄色な葉が空からばらついて降って来ると同時に、
木
(
こ
)
の葉の雨ばかりではなく
観画談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
木製の椅子が一
対
(
つい
)
、夜も昼も寝ころんで空想にふける寝台が一脚、それから大きい黒い
槲
(
かしわ
)
の書棚が一個、そのほかには部屋じゅうに家具と呼ばれそうな物は
甚
(
はなは
)
だ少ないのであった。
世界怪談名作集:16 鏡中の美女
(新字新仮名)
/
ジョージ・マクドナルド
(著)
二本の
槲
(
かしわ
)
の古木の間に坐りながら、大気とともに満ち渡るなごやかな、ほっこりとした安らかさを深く深く呼吸する彼女は、髪の毛の先々にまで命の有難さを感じずにはいられなかった。
地は饒なり
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
そう言えば、
鵲
(
かささぎ
)
は、
弾機
(
ばね
)
仕掛けのような飛び方をして逃げて行く。七面鳥は生垣のなかに隠れ、
初々
(
ういうい
)
しい
仔馬
(
こうま
)
は
槲
(
かしわ
)
の
木蔭
(
こかげ
)
に身を寄せる。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
その頃まで枯葉の落ちずにいる
槲
(
かしわ
)
、堅い大きな蕾を持って雪の中で辛抱し通したような
石楠木
(
しゃくなぎ
)
、一つとして過ぎ行く季節の記念でないものは無い。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
その
槲
(
かしわ
)
の木は、片側の根際まで剥ぎ取られていて、露出した肌が、なんとなく不気味な生々しい赤色で、それが腐り
爛
(
ただ
)
れた四肢の肉のように見えた。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
植物園や
円山
(
まるやま
)
公園や大学構内は美しい。
楡
(
エルム
)
やいろいろの
槲
(
かしわ
)
やいたやなどの大木は内地で見たことのないものである。芝生の緑が柔らかで鮮やかで
摘
(
つ
)
めば汁の実になりそうである。
札幌まで
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
海に臨んだ岡の
片岨
(
かたそば
)
に、
葛
(
くず
)
の葉の
匍
(
は
)
い渡った所は方々にあった。越後の海府なども汽車で夏通ると、山はこれ一色で杉も
槲
(
かしわ
)
も覆いつくし、深紅の葛の花ばかりが
抽
(
ぬ
)
け出して咲いている。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
その
微
(
かす
)
かな呼び声で、こっちへやって来るのか、遠くへ行ってしまうのかわかるのである。彼は大きな
槲
(
かしわ
)
の
樹
(
き
)
の間を縫って、重たげに飛んで行く。
博物誌
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
話はやや北方に偏するけれども、ぜひとも言ってみたいのは
槲
(
かしわ
)
の林のことである。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
槲
(
かしわ
)
の葉が北風に鳴るように、一寸したことにも
直
(
すぐ
)
に
激
(
げき
)
し
顫
(
ふる
)
えるような人がある。それにつけて思出すことは、私が小諸へ来たばかりの時、青年会を起そうという話が町の有志者の間にあった。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
北風が来れば、
槲
(
かしわ
)
の葉が
直
(
す
)
ぐ鳴るような調子で
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
“槲(カシワ)”の解説
カシワ(柏・槲、学名: Quercus dentata)は、ブナ科コナラ属の落葉高木。日本・朝鮮半島・中国の東アジア地域に分布しており、痩せ地でも生育し、海岸で群落になっているところもある。葉は、かつて料理を盛るために使われ、端午の節句の柏餅を包む葉としても知られる。冬でも葉が落葉せずに枝に残ることから、日本では神が宿る縁起木とされている。
(出典:Wikipedia)
槲
漢検1級
部首:⽊
15画
“槲”を含む語句
木槲
槲寄生
大槲樹
槲木
槲樹
槲橛