本棚ほんだな)” の例文
そのすぐそばにある、大きな本棚ほんだなには、ほんものの本が、ぎっしりつまっていました。名づけ親は、その中の一冊を、よく読んでいました。
と言いながら、その時次郎は私の四畳半の壁のそばにたてかけた本棚ほんだなの前に置き替えて見せた。兄のいた妹の半身像だ。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
……わたしを笑ってちょうだい、ばかなんですもの。……なつかしい、わたしの本棚ほんだな……(戸棚にキスする)わたしの小っちゃなテーブル……
桜の園 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
自分は瞹眛あいまいな返事をして、早く立ちたいような気のする尻を元の席にえていた。そうして本棚ほんだなの上に載せてある女の首をちょいちょい眺めた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
おかあさんはたちまち本棚ほんだなのところへいって、ルーテルの説教集せっきょうしゅうをおろし、その日のお説教のところをひらいて、まどぎわのテーブルの上におきました。
あわててあけてみますと、中は小ぎれいにおかざりのできたへやで、本棚ほんだながあって、ハープシコードがおいてあって音楽がたのしくきこえていました。
僕の本棚ほんだなの本は、ほとんど廉価れんかの文庫本のみにして、しかも古本屋から仕入れしものなるに依って、質の値もおのずから、このように安いのである。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
そこの玄関口に無雑作にほうり出されてあるほこりまみれの本棚ほんだなだの、びかかったタイプライタアだのへ目を注いでいた私は、やっと顔を持ち上げながら
旅の絵 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
一方には大きな本棚ほんだなに、金文字のせた古ぼけた洋書がギッシリ詰まっているかと思うと、一方の棚には、薬剤であろう、レッテルをりつけた大小さまざまのガラスびん
人間豹 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
六畳の間の本棚ほんだなにあるよってに、………と、幸子は矢張寝たままで命じた。
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
先生が出て来て、黙って床の間の本棚ほんだなから算術の例題集を出してくれる。
花物語 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
私は何かこう目に見えないものが群がり起こって来るような心持ちで、本棚ほんだながわりに自分の蔵書のしまってある四畳半の押入れをもあけて見た。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
いやになるよ! いやどうも、情けないこった! おまけに先刻さっきは、本棚ほんだなの前で演説をした……ばかばかしい! 済んでからやっと、ばかげていることがわかったんだ。
桜の園 (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
枕元まくらもとで人が何か云うと、話をしなくっちあ生きていられないおしゃべりほど情ない下賤げせんなものはあるまいと思った。眼を開いて本棚ほんだなを見渡すと書物がぎっしり詰っている。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
午後、神田かんだに行き、受験参考書を全部そろえた。夏休みまでに代数研究(上・下)をやってしまって、夏休みには、平面幾何の総復習をしよう。夜は、本棚ほんだなの整理をした。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
代助は仕舞に本棚ほんだななかから、大きな画帖をしてて、膝のうへひろげて、はじめた。けれども、それも、たゞゆびさきで順々にけてく丈であつた。一つ画を半分はんぶんとはあぢはつてゐられなかつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
本棚ほんだなに私の著書を並べているサロンは、どこにも無い。
十五年間 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「何だか存じませんが、すきだものでございますから、むやみと貼散らかしまして」と彼の母は弁解がましく云った。自分は横手の本棚ほんだなの上に、丸いつぼと並べて置いてあった一枚の油絵に眼を着けた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)