景樹かげき)” の例文
長押なげしの上には香川景樹かげきからお婆さんの配偶つれあいであった人に宛てたという歌人うたよみらしく達者な筆で書いた古い手紙が額にして掛けてある。
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
少し季節には早いけれども、香川景樹かげきみね夕立、———夕立は愛宕あたごの峰にかかりけり清滝河ぞ今濁るらん、の懐紙を床に掛けて貰った。
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
景樹かげきなどがさわがれてゐたかげに、評判ひようばんにならずにゐたひとが、まだ/\ありました。その一等いつとうにつくひとは、越中えつちゆう富山とやま橘曙覽たちばなのあけみであります。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
其たねつたへて景樹かげきといふうたよみの処にゆきたれば、かかるたねあること知らで朝顔をはかなきものとおもひけるかなとよみ候よし。私はしる人にあらず、伝へゆきしなり。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
更に後世になっても「あやしさの私雨や初紅葉」という嘯山しょうざんの句、「箱根山関もる人も朝ぎりのわたくし雨にあざむかれつゝ」という景樹かげきの歌など、これを踏襲したものがある。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
その歌、『古今』『新古今』の陳套ちんとうちず真淵まぶち景樹かげき窠臼かきゅうに陥らず、『万葉』を学んで『万葉』を脱し、鎖事さじ俗事を捕えきたりて縦横に馳駆ちくするところ、かえって高雅蒼老そうろうの俗気を帯びず。
曙覧の歌 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
「笠につく蝶と一つに都入り」といふのは、その時の句ださうで、一向詰らないものだが、こんな句よりも京都に来て山陽や景樹かげきや豊彦やに会つたのは、彼の生涯にとつて忘れられない事柄だつた。
景樹かげきうたほうが、みんなにわかりやすからうとおもひますが、そこが散文さんぶんとのちがふところで、意味いみうへからおもしろいことが
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)
前に挙げた淀川両岸の絵本に出ている橋本の図を見ると月が男山のうしろの空にかかっていてをとこやま峰さしのぼる月かげにあらはれわたるよどの川舟という景樹かげきの歌と
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
世間せけんのものをても、たれにもわかるものが、きっとよい文學ぶんがく藝術げいじゆつであるとおもつてゐるひともあるが、それはたいへんな間違まちがひであるといはねばなりません。景樹かげきのことはこれでよします。
歌の話 (旧字旧仮名) / 折口信夫(著)