旺盛わうせい)” の例文
彼の筆の早さを春水や種彦のそれと比較されると云ふ事は、自尊心の旺盛わうせいな彼にとつて、勿論好ましい事ではない。しかも彼は遅筆の方である。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
ことに人夫は皆藤原村及小日向村中血気けつき旺盛わうせいの者にして、予等一行と辛苦しんくを共にし、古来こらい未曾有みそういう発見はつけんをなさんと欲するの念慮ねんりよある者のみをえらびたるなり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
五十前後のあぶらの乘つた中老人で、物慾の旺盛わうせいらしいのと、何事も金で始末の出來ないものはないと思ひ込んで居る樣子で、ひどく平次のかんにさはります。
しかるに今日こんにち状態ぜうたい如何いかゞであるか、外語研究ぐわいごけんきう旺盛わうせいはまことに結構けつこうであるが、一てんして漫然まんぜんたる外語崇拜ぐわいごすうはいとなり、母語ぼご輕侮けいぶとなり、理由りいうなくして母語ぼご
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
粗剛そがうあつかはかこみからのがれて爽快さうくわい呼吸こきふ仕始しはじめたことをよろこぶやうにずん/\と伸長しんちやうして、つひにはつても/\、猶且やつぱりずん/\と骨立ほねだつてみきさらかたちづくられるほど旺盛わうせい活力くわつりよく恢復くわいふくするのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
これは顔でも同じ事で、下顎骨したあごぼねの張つた頬のあたりや、やや大きい口の周囲に、旺盛わうせいな動物的精力が、恐ろしいひらめきを見せてゐる事は、ほとんど壮年の昔と変りがない。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
片鬢かたびん火傷やけどか何んかで大禿はげになつた上、惡い病ひで鼻も頬も潰れたらしく、見る眼も氣の毒なほど痛々しい姿ですが、それでも生活力は旺盛わうせいらしく、馬の草鞋わらぢを履いた足と手で
その戰鬪的な感じのする女——まだ二十八の、充分に生活力の旺盛わうせいなのが、右の頸動脈けいどうみやくから喉をつらぬかれ、それを刺した脇差は、疊の上に突つ立つて居るのは恐ろしいことでした。
四方は薄暗くなつたと言つても、八五郎の顏と調子が判らない程ではなかつたでせうが、自分の仕事に足を踏込まれると、かう言はずには居られない戰鬪意識の旺盛わうせいな銅八であつたのです。