斬新ざんしん)” の例文
しかもひるがえって他の一面、古い天然にまんとする人間の目から見ると、実はまたこれほど斬新ざんしん奇抜なる取合せはないのである。
わたくしどもでは皆さんの御便宜を図って、羅紗屋と特約を結んで、精々勉強いたしますから、どうぞ御贔屓に……スタイルもごく斬新ざんしんでございます」
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
○広重の『草筆画譜』といふものを見るに蕙斎けいさいの蕙斎略画式の斬新ざんしんなのには及ばないが、しかし一体によく出来て居る。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
われわれは不思議に思う、最も進歩的な西洋諸国の間に何ゆえに建築がかくも斬新ざんしんを欠いているのか、かくも古くさい様式の反復に満ちているのかと。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)
会衆は恍惚こうこつとしてかれの声をきいていた、それはきわめて大胆で奇抜で、そうして斬新ざんしんな論旨である、偶像破壊はかい! 平等と自由! デモクラシーの意義!
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
禅のほかに華厳けごん哲学や日本で特に発達した他力思想の如きも、キリスト教文化に斬新ざんしんな贈物となるであろう。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
手ごわいだけにおもしろいですよ。いよいよ次はあいつの番です。まあ、見ていてください。斬新ざんしんな手口を
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
ラシャ、モール、南蛮笠などの、当時にあっては、極めて斬新ざんしんな異国調を、その武装に飾っているところは、えんとして、小信長の身なりそのままといってよい。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
斬新ざんしんなものでなけりゃならぬとか、そういう無理な注文をして奇怪な句を作るようなことをせず、おもむろに、確実に、その人相応の力をこめて、沈着な心持で
俳句の作りよう (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
従ってこれに関して読者諸君を益するような斬新ざんしんな勉強法もなければ、面白い材料も持たぬが、自身の教訓の為め、つまり這麼こんな不勉強者は、ういう結果になるといういましめ
私の経過した学生時代 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
鶴見造船などの使役しえきに行く連中で、この界隈を、毎日のように通るので馴れっ子になっているが、山手に住んでいる柚子には、この感覚は斬新ざんしんらしく、文庫本から顔をあげて
春雪 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
十五年の間、平和のうちに、戸外のちまたに、偉大なる主義が働くのが見られた。それらの主義は、思想家にとってはいかにも陳腐であったが、為政家にとってはいかにも斬新ざんしんであった。
中心とする立ち場に於いては保守主義、さ——然し、そのまた奧に、斬新ざんしんな態度を
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
死んだ連合つれあいとが、前にいった大長者格の呉服問屋、丁吟ちょうぎんからのれんを貰って、幕末明治のはじめに唐物屋を開いたのが大当りにあたって、問屋まちに肩をならべ、しかも斬新ざんしんな商業だけに
かれの文体は、後年には端的な奔放ほんぽう性を、巧緻こうち斬新ざんしんな陰影を欠いた。
羽後うご能代のしろの雑誌『俳星』は第二巻第一号を出せり。為山いざんの表紙模様はふきの林に牛を追ふ意匠斬新ざんしんにしてしかも模様化したる処古雅、妙いふべからず。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
斬新ざんしんなるものをもとより喜ぶが、斬新ならんとして怪奇なるものはただ笑ってこれをてる。
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
「あしたになったら旦那様だんなさまがさぞ驚くでしょう」と母が笑った。お貞さんも下を向いて苦笑した。彼女は初めて島田に結った。それが予期できなかった斬新ざんしんの感じを自分に与えた。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
規模きぼの大、構想の斬新ざんしん、それは誰の設計でもなく、彼の創作によるものだった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ふうん、なるほど、考えましたね。いかにも斬新ざんしんきばつの名トリックですよ。これなら、どんな名探偵だって、わかりっこありませんよ。ありがとう。ところで、それはいつ実行しますかな」
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「庵を並べん」というがごとき斬新ざんしんにして趣味ある趣向は西行ならでは言わざるべく特に「冬の」と置きたるもまた尋常歌よみの手段にあらずとぞんじ候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
虚子は自分に、じゃ、あなた謡って下さいと依頼した。これははやしの何物たるを知らない自分にとっては、迷惑でもあったが、また斬新ざんしんという興味もあった。謡いましょうと引き受けた。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
またその主観は小主観ではない、深い厚い主観である。また斬新ざんしんな主観である。月並の句とこの背景ある句とが往々にして誤られやすきにかかわらず、その間には非常なる相違がなければならぬ。
俳句の作りよう (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
音なくして音を聴くべく、色なくして色を観るべし。此の如くして得来る者、必ず斬新ざんしん奇警きけい人を驚かすに足る者あり。俳句界においてこの人を求むるに蕪村一人あり。
俳人蕪村 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
音なくして音をくべく、色なくして色を観るべし。かくのごとくして得来たるもの、必ず斬新ざんしん奇警人を驚かすに足るものあり。俳句界においてこの人を求むるに蕪村一人あり。
俳人蕪村 (新字新仮名) / 正岡子規(著)