打捨うちす)” の例文
私事わたくしこと人々の手前も有之候故これありさふらふゆゑしるしばかりに医者にも掛り候へども、もとより薬などは飲みも致さず、みな打捨うちす申候まをしさふらふ
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
「ちょいと何が有名なのさ。して頂戴ちょうだいよ。」と君江はわざとらしく憤然ふんぜんと椅子を立って、先刻さっきから打捨うちすてて置いた自動車商会の矢田さんの方へと行ってしまった。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
二連銃にれんじう銃身じうしんにぎつて水兵すいへい顧見かへりみると、水兵すいへいいきほひするどく五六此方こなたはしちかづく、此時このとき二發にはつ彈丸だんぐわんくらつた猛狒ゴリラ吾等われら打捨うちすてゝ、奔馬ほんばごとむかひ、一聲いつせいさけぶよと
火を載せたまま灰も取らず打捨うちすておくようではとてもむずかしいお菓子は出来ません。肉のロースなんぞはお菓子より楽ですけれどもそれでも打捨ておくと火が弱くなっていけません。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
そばには可愛かはゆちご寐姿ねすがたみゆ、ひざうへには無情むじやうきみれを打捨うちすたまふかと、殿との御聲おんこゑあり/\きこえて、外面そともには良人をつともどらんけたるつきしもさむし、たとへば良人をつといま此處こゝもどらせたまふとも
軒もる月 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)