微賤びせん)” の例文
微賤びせんの一僧侶そうりよ吉宗ぬしの落胤らくいんと稱し政府せいふせまる事急にして其證跡しようせきも明かなれば天下の有司いうし彼に魅入みいれられ既にお世繼よつぎあふがんと爲たりしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
その生活こそ、海よりもより深くより広いのだ。われわれのうちのもっとも微賤びせんな者といえども、内に無限なるものをになっているのだ。
「私たち兄妹が、微賤びせんの身から今日の富貴ふうきとなったのも、そのはじめは十常侍たちの内官の推薦があったからではありませんか」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上代の神人は申すもかしこし——わが親愛なる、わが微賤びせんなる宇治山田の米友に於てもまた、この「あがつまの国」にやるせなき思いが残るのです。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
微賤びせんであるこの侏儒しゅじゅは、やがてイオニア人(哲人)となるであろうか、またはベオチア人(ばか)となるであろうか。
そして僕自身が貧乏で微賤びせんなものだから、あなたにも貧しい、微賤びせんな仕事しか見つけて上げられないのです。
微賤びせんから引上げて、三千五百石の大身の奧方に直した昔の經緯いきさつは、一言の説明がなくともよくわかります。
彼は貴人の奥方の微賤びせんよりでしためしすくなからざるを見たり。又は富人の醜き妻をいとひて、美きめかけに親むを見たり。才だにあらば男立身は思のままなる如く、女は色をもて富貴ふうきを得べしと信じたり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
其の自ら視ること※然かんぜんとして、微賤びせんの時の如し。
微賤びせんな一廷尉の分際ぶんざいが、かくも長々と、愚言を奏したてまつろうなどとは、たれしも夢思わぬことではあったが、賜謁しえつをお取次いたした奏者そうじゃのつみも軽くない。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
名声をも快楽をも金をももたらし得ないような人々——ちょうどこの二人の微賤びせんな読者のように、世の中に姿も見せず、どこにも筆を執らず、ただ愛し黙ることしか知らないような人々
仕事によらずして行きあたりばったりに日々のパンを求むる者、悲惨と微賤びせんのうちに沈淪ちんりんしてる名もなき者、腕をあらわにしてる者、跣足はだしのままの者、それらが暴動にくみする人々である。
僕は微賤びせんだ。リヴァズ家は古い家です。
(身を、生れながら微賤びせんと思え。大名という育ちぐせがあればこそ、武士のしつけがあればこそ、腹も立つ、血もいきどおる。御奉公のおん為に、七日は、眼をつぶって——)
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから彼はまた、自分の知ってる微賤びせんな魂の人たちのことをも考えた。
「お恥かしい微賤びせんです、劉璋の家中において、別駕べつがの職についております。失礼ながら其許そこもとは?」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
平六微賤びせんではございますが、大賀ごときに追従ついしょうして、禄地を増し賜わらんなどというきたない心は持ちません。左様な禄なら一粒なりとも、受けては武士の汚名と存じおります。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そんな微賤びせんなやつが奉行か。さては敵も本気じゃない」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
石田三成もまた微賤びせんな浪人者の子であった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見ずや、微賤びせんつ、英雄ども
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)