ふたゝ)” の例文
山間の私雨わたくしあめといふ言葉は實に斯樣かういふのをいふのであらう。我等は此地こゝの探勝を他日の樂みにしてふたゝび車上の人となつた。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
に佛者はおこなひなかばには、王侯のめしにも應ぜずとかや、我ながら心なかりしと、しばし門下に彳みて、鈴の音の絶えしを待ちてふたゝかどを敲けば、内にはあるじの聲として
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
おつぎがあわてゝうしろかうとするときふたゝはげしくつたがおつぎのはなあたつた。おつぎは兩手りやうてはなおさへてちゞまつた。女同士をんなどうしもみ木陰こかげそばめてやうもなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一座ふたゝ哄笑こうせう
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
ふたゝび其の例に就いて言はうならば、既に一度樹を植ゑたる以上、必ず其の樹は其の人又は他人乃至國家に對して與ふるところが無くて已むものでは無いから
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
聞き兼ねけんとすゐするまゝ、思ひ入りて擦る数珠の音の声澄みて、とふたゝび言へば後は言はせず、君にて御坐せしよ、こはいかに、となんだに顫ふおろ/\声、言葉の文もしどろもどろに
二日物語 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
朝食を終つてから宿の主人や東日とうにちの通信員の案内を得てふたゝび華嚴の瀧へと向つた。
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
ふたゝび艇へ戻つて寺ヶ崎のはなを廻り、上野島かけて大日崎の方を走ると、艇の位置が變るにつけて四圍の山々も動き、今までは見えなかつた山が姿をあらはしたり、今まで見えた山が隱れて行つたり
華厳滝 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)