御辞儀おじぎ)” の例文
旧字:御辭儀
すると妻君が御名前はかねて伺っておりますと叮嚀ていねい御辞儀おじぎをされるから、余もやむをえず、はあと云ったなり博士らしく挨拶あいさつをした。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「あら、ちやうちやんもたの。学校がお休み………あら、さう。」れからけたやうに、ほゝゝほと笑つて、さて丁寧ていねいに手をついて御辞儀おじぎをしながら
すみだ川 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
私が誠に悪う御在ましたから堪忍かんにんして下さいと御辞儀おじぎをして謝ったけれども、心の中では謝りも何もせぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
一通り哄笑が終ると、一同は改まって、大納言に慇懃いんぎん御辞儀おじぎをする。それがむと、再び私語・囁き。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
五歳いつゝばかりをかしらに、三人の女の児は母親に倚添よりそつて、恥かしがつてろく御辞儀おじぎも為なかつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
禿鷹が丁寧ていねい御辞儀おじぎをするのに、山の神は大様おうようにうなずいてみせました。
コーカサスの禿鷹 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
仕方あるにもかかわらず、こっちの好意をもって下げるのである。同類に対する愛憐あいれんの念より生ずる真正の御辞儀おじぎである。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
昨日微笑しながら御辞儀おじぎをして、余のわきけた女とはどうしても思えなかった。この女は我々の立つ前の晩に、始めて御給仕に出て来た。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
三沢はその前から「あの女」の看護婦に自分が御辞儀おじぎをするところが変だと云って、始終しじゅう自分に調戯からかっていたのである。
行人 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もしおこられたら、あやまるだけで、詫まって聞かれなければ、御辞儀おじぎ叮嚀ていねいにして帰れば好かろうと覚悟をきめた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
敬太郎はこの言訳に対して適当と思うような挨拶あいさつを一と口と、それに添えた叮嚀ていねい御辞儀おじぎを一つした。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
下女は何とも云わずに御辞儀おじぎをして立って行く。白足袋しろたびの裏だけが目立ってよごれて見える。道也先生の頭の上には丸く鉄を鋳抜いぬいた、かな灯籠どうろうがぶら下がっている。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼は午前に一回ひょっくり階子段はしごだんの途中で吉川に出会った。しかし彼はくだりがけ、むこうのぼりがけだったので、ちがい叮嚀ていねい御辞儀おじぎをしたぎり、彼は何にも云わなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
それで御辞儀おじぎをして、どうも何とかですと云ったが、相手はどうしても鏡の中へ出て来ない。
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あぶないよと注意すると、女は笑いながら軽い御辞儀おじぎをして、余の肩をこすって行き過ぎた。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あいふすまをあけて、細君が茶を持って出る。高柳君と御辞儀おじぎの交換をして居間へ退しりぞく。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
御辞儀おじぎ一つで人を愚弄ぐろうするよりは、履物はきものそろえて人を揶揄やゆする方が深刻ではないか。この心理を一歩開拓して考えて見る。吾々が使用する大抵の命題は反対の意味に解釈が出来る事となろう。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
小野さんは黙って笑ながら御辞儀おじぎをした。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)