たゞ)” の例文
〔譯〕果斷くわだんは、より來るもの有り。より來るもの有り。ゆうより來るもの有り。義と智とをあはせて來るもの有り、じやうなり。たゞゆうのみなるはあやふし。
終夜よもすがら思ひ煩ひて顏の色たゞならず、肅然として佛壇に向ひ、眼を閉ぢて祈念の體、心細くも立ち上る一縷の香煙に身を包ませて、爪繰つまぐる珠數の音えたり。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
かく「かえすッたって、どうもたゞは返されません、私も路銀を遣い、こうやって態々わざ/\尋ねて来たんですものを」
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
わたくしいま喰殺くひころされるのは覺悟かくごまへだが、どうせぬならたゞなぬぞ、睨合にらみあつてあひだに、先方せんぱうすきでもあつたなら、機先きせん此方こなたから飛掛とびかゝつて、多少たせういたさはせてれんとかんがへたので
後の日を約して小走りに歸り行く男の影をつく/″\見送りて、瀧口は枯木の如く立ちすくみ、何處ともなく見詰むる眼の光たゞならず。『二郎、二郎とは何人なんびとならん』。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
に居てらんを忘れざるは長久の道、榮華の中に沒落を思ふも、たゞに重盛が杞憂のみにあらじ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)