彽徊ていくわい)” の例文
しかもその臆斷おくだんに、はらなか彽徊ていくわいすること馬鹿々々ばか/\しいのにいて、わすれた洋燈らんぷやうやくふつとした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その朝もやはりかう云ふでんで、いよいよ鐘が鳴る間際まぎはまで、見晴しの好い二階の廊下に彽徊ていくわいしてゐたのである。
あの頃の自分の事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
戀々れん/\として、彽徊ていくわいし、やうやくにしてさとくだれば、屋根やねひさし時雨しぐれ晴間はれまを、ちら/\とひるひともちひさむしあり、小橋こばし稚子等うなゐらうたふをけ。(おほわた)い、い、まゝはしよ。
五月より (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かれおほくのげかゝつたやしろと、寂果さびはててら見盡みつくして、いろめた歴史れきしうへに、くろあたまける勇氣ゆうきうしなひかけた。寐耄ねぼけたむかし彽徊ていくわいするほどかれ氣分きぶんれてゐなかつたのである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)