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彽徊
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ていくわい
しかも
其臆斷に、
腹の
中で
彽徊する
事の
馬鹿々々しいのに
氣が
付いて、
消し
忘れた
洋燈を
漸くふつと
吹き
消した。
その朝もやはりかう云ふ
伝で、
愈鐘が鳴る
間際まで、見晴しの好い二階の廊下に
彽徊してゐたのである。
戀々として、
彽徊し、
漸くにして
里に
下れば、
屋根、
廂、
時雨の
晴間を、ちら/\と
晝灯す
小き
蟲あり、
小橋の
稚子等の
唄ふを
聞け。(おほわた)
來い、
來い、まゝ
食はしよ。
彼は
多くの
剥げかゝつた
社と、
寂果た
寺を
見盡して、
色の
褪めた
歴史の
上に、
黒い
頭を
振り
向ける
勇氣を
失ひかけた。
寐耄けた
昔に
彽徊する
程、
彼の
氣分は
枯れてゐなかつたのである。