くや)” の例文
勘次かんじ近所きんじよ姻戚みよりとのほかには一ぱんさなかつたがそれでもむらのものはみなせんづゝつてくやみにた。さうしてさつさとかへつてつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
坐蒲団ざぶとんを敷いて坐る前に、お房やお菊のくやみだの、郷里くにに居るしゅうとめからの言伝ことづてだの、夫が来てよく世話に成る礼だのを述べた。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
くやみにおいでくださいました御好意を無視あそばすようなお扱いもあまりでございましょうから
源氏物語:39 夕霧一 (新字新仮名) / 紫式部(著)
くやむそなたの眞實しんじつ
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
たま/\抽斗ひきだしからしたあかかぬ半纏はんてんて、かみにはどんな姿なりにもくしれて、さうしてくやみをすますまでは彼等かれら平常いつもにないしほらしい容子ようすたもつのである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
新旧の移動が各自の生活にまで浸って来たこともはなはだしい。彼は故人となった師鉄胤のくやみを言い入れに平田家を訪ねようとして、柳原の長い土手を通ったこともある。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
森彦、正太夫婦を始め、お俊が父方の遠い親戚とか、母方の縁者とか、そういう人達までくやみを言い入れに来た。混雑ごたごたしたところへ、丁度三吉も春先の泥をこねてやって来た。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その考えに半蔵はやや心を安んじて、翌日はとりあえず、京都以来の平田鉄胤かねたね老先生をその隠棲いんせいたずねた。彼が延胤のぶたね若先生のくやみを言い入れると、師もひどく力を落としていた。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
半蔵の死が馬籠以外の土地へも通知されて行くころには、近在からくやみを言い入れに集まるふるい弟子たちもすくなくなかったが、その中でだれよりも先に急いで来たものは落合の勝重であった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)