帰路かえり)” の例文
旧字:歸路
帰路かえりにも立ち寄って今一度逢って見たいと思っていたが、止むを得ない事情で東海道を帰ったために、遂に再び其の病人を見る機会がなかった。
人面瘡物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
自分は人々にならって、堤腹にあしを出しながら、帰路かえりには捨てるつもりで持って来た安い猪口にが酒をいで呑んだ。
野道 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
帰路かえりは二組に分かれ一組は船で帰り、一組は陸を徒歩かちで帰ることにして、僕は叔父さんが離さないので陸を帰った。
鹿狩り (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
伊達若狭守殿の控邸について、帰路かえりを急ぐ親分乾児、早い一番鶏の声が軽子河岸かるこがしの朝焼けに吸われて行った。
ただ、あだには見過しがたい、その二品に対する心ゆかしと、帰路かえりには必ず立寄るべき心のしるしに、羽織を脱いで、寺にさし置いた事だけを——言い添えよう。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
目黒から間道を脱けて行ったが、それでも帰路かえりった。小平太はの刻前にようよう戻ってきて、自分で指図をして、それぞれ片づけるものは片づけさせてしまった。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)
お雪は又、やや躊躇ちゅうちょした後で、帰路かえりの船旅を妹の夫と共にしたことを話した。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
歩く方が心持がいから、却って旅なぞをいたす方が病気も早く癒るであろうと云うので、不動さまへお願掛がんがけをしたことも有るから、お礼まいりかた/″\往って、帰路かえりに中矢切へ廻って
二人は一緒に入るような風呂桶ふろおけを買いに出た帰路かえりを歩いているのであった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
「それじゃ今日の帰路かえりにだな」
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
吾家うちおっかさんが与惣次よそうじさんところへばれて行った帰路かえりのところへちょうどおまえが衝突ぶつかったので、すぐに見つけられて止められたのだが、後で母様おっかさんのお話にあ
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
こちとらアもらった路銀をせいぜいおもしろおかしくさんじてヨ、それに帰路かえりはお侍連の東道役とうどうやく、大いばりで江戸入りができようてんだからこんなうめえ話はねえサ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
帰路かえりには気をけねばなりません。何処どこですか、その財産家のうちは。」
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お雪の話は帰路かえりのことに移って行った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
帰路かえりをおいとい遊ばせや」
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
守人は全身に雨を受けて、手負いのようにうなりながら、帰路かえりを急いだ。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
何かしきりに考えながら帰路かえりを急いで、三次は花川戸の自宅いえを起した。