嶮山けんざん)” の例文
山へ登るのもくいいことであります。深山しんざんに入り、高山、嶮山けんざんなんぞへ登るということになると、一種の神秘的な興味も多いことです。
幻談 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
峨峰がほう嶮山けんざんかこまれた大湖たいこだから、時々とき/″\さつきりおそふと、このんでるのが、方角はうがくまよふうちにはねよわつて、みづちることいてゐた。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
天下は暗澹あんたん——いずれ、光明のかんむりをいただく天下人てんかびとはあろうが、その道程どうてい刀林地獄とうりんじごく血汐ちしお修羅しゅらじゃ。この秀吉ひでよしのまえにも多難な嶮山けんざん累々るいるいとそびえている
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
文化的には、ここは沃野よくやをかかえ、嶮山けんざんを負い、京都諸地方への交通路をやくして、天産に恵まれ、農工もさかんだし——水はうるわしく、女もきれいだが、日吉は心のうちで
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あけの明星の光明こうみょうが、嶮山けんざんずい浸透しみとおつて、横に一幅ひとはば水が光り、縦に一筋ひとすじむらさきりつつ真紅まっかに燃ゆる、もみぢに添ひたる、三抱余みかかえあまり見上げるやうな杉の大木たいぼくの、こずえ近い葉の中から
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
五十万という大軍の運命をその指揮にになっている重任はいうまでもない。かつはまた、従来の戦場とちがって、風土気候も悪いし、輸送の不便は甚だしいし、嶮山けんざん密林、ほとんど人跡未踏の地が多い。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)