山内やまのうち)” の例文
「小石川の五百三十六番だ。川辺という家なんだ。そこへ、電話をかけてね、山内やまのうちさんのお嬢さんは、いらっしゃいますかというんだ。」
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
「それでも私の病気はね、ただ神経が疲れているのだって、今日も山内やまのうち先生がそうおっしゃったわ。二三日よく眠りさえすれば、——あら。」
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
見て赤川大膳は心中に驚き見透みすかされては一大事と氣をはげましいか山内やまのうち狂氣きやうきせしか上にたいし奉つり無禮の過言くわごんいで切捨きりすてんと立よりて刀のつかを掛るを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
天下の風雲をそそのかすほどのことをやり得られないとしても、天一坊を得れば山内やまのうち、赤川となり、大本教を得れば出口信長公となり、一燈園を作れば西田天香となり
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
今残っている勝久さんと保さんとの姉弟あねおとうと、それから終吉さんの父おさむ、この三人の子は一つ腹で、抽斎の四人目の妻、山内やまのうち五百いおの生んだのである。勝久さんは名をくがという。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
まだ庭を見、出入りの門を飾るいとまはない。住むに足ればよいのだ。——左様に急を申したところ、当所の知事兼道の邸を、そのまま山内やまのうちから移して組めば早かろうと皆が云う。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もういいね。十羽ばかり取ったがね。僕が十羽、大谷おおたにが七羽、加瀬かせ山内やまのうちが八羽ずつ」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私は思わずも藍のことで余り長く阿波の国にとどまりましたから、旅を土佐の国へと急ぐことに致しましょう。ここは高知県で都は高知であります。山内やまのうち氏の居城のあったところであります。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
亮の家の祖先は徳川とくがわ以前に長曾我部ちょうそかべ氏の臣であって、のち山内やまのうち氏に仕えた、いわゆる郷士であった。曾祖父そうそふは剣道の師範のような事をやっていて、そのころはかなり家運が隆盛であったらしい。
亮の追憶 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
山内やまのうち里見氏さとみし本姓ほんせい)からましたが、とふのを、わたし自分じぶん取次とりついで、はゝあ、れだな、白樺しらかば支那鞄しなかばん間違まちがへたとふ、名物めいぶつとつさんは、とうなづかれたのが、コツプに油紙あぶらがみふたをしたのに
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「この間、お父さまにお目にかかったのは、山内やまのうち倭文子さんのご縁談です、お聞きになりましたか。」
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
土佐は山内やまのうちだ、山内の当主は容堂といって、なかなかどうらく大名だそうだが、なあに、大名であろうと何であろうと、田舎者いなかものは田舎者だ、遊び方が泥臭い——というような冷嘲気分が
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
滝口三郎経俊つねとしといって、山内やまのうちノ庄を領していたが、頼朝が旗上げの際に、藤九郎盛長を使いとして招いたところ、経俊は一笑に附して、拒絶したばかりでなく、さんざんに悪口あっこうをついたあげく
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ねぇ。村川君、山内やまのうちのお嬢さんとも話したことがあるでしょう。」
第二の接吻 (新字新仮名) / 菊池寛(著)