寒氣さむけ)” の例文
新字:寒気
彼處あすこ通拔とほりぬけねばならないとおもふと、今度こんど寒氣さむけがした。われながら、自分じぶんあやしむほどであるから、おそろしくいぬはゞかつたものである。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
『風邪かも知れませんが、……先刻さつき支廳から出て坂を下りる時も、妙に寒氣さむけがしましてねす。餘程ぬくい日ですけれどもねす。』
病院の窓 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
無愛嬌ぶあいけうな、見るから寒氣さむけだつてくる無人境の風景畫を遠慮も會釋もなくおし擴げたのである! わたしは見も知りもせぬ人間がきびしい顏をして
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
寒氣さむけがすると言つて途中から歸り、ぬくくなりかけた内湯をわかし直して入つてゐるといふことでしたよ、——御藏前衆おくらまへしうなどといふものは矢張り豪勢なものですね。
はじかれ寒氣さむけおぼえ、吐氣はきけもよほして、異樣いやう心地惡こゝちあしさが指先ゆびさきまで染渡しみわたると、なにからあたま突上つきあげてる、さうしてみゝおほかぶさるやうながする。あをひかり閃付ちらつく。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
私はヴェランダの柱に寄りかゝつて、灰色の外套をしつかりと身に引き寄せ、外で私を苦しめる寒氣さむけと、内で私を惱ます滿されない空腹とを忘れようと努めて、視察と、もの思ひに耽つた。
例の如く百詩が精苦して書を讀んでも猶通ぜぬので、發憤していぬるを肯んぜず、夜は更け寒氣さむけは甚だしく、筆硯皆凍つたのであるが、燈下に堅坐して、凝然として沈思して敢て動かなかつた。
努力論 (旧字旧仮名) / 幸田露伴(著)
しかし寒氣さむけもしなければ、氣が遠くなることもなかつた。