寐込ねこ)” の例文
新年しんねん停滯もたれてゐるのはじつくるしいですよ。それ今日けふひるから、とう/\塵世ぢんせいとほざけて、病氣びやうきになつてぐつと寐込ねこんぢまいました。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ぐッすり寐込ねこんででもいようもんなら、盗賊どろぼう遁込にげこんだようじゃから、なぞというて、叩き起して周章あわてさせる。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
内証ないしょに大一座の客があって、雪はふる、部屋々々でも寐込ねこんだのをしおにぬけて出て、ここまでは来ましたが、土を踏むのにさえ遠退とおのいた、足がすくんで震える上に
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……こがらしかれぬまへに、雪国ゆきぐにゆき不意ふいて、のまゝ焚附たきつけにもらずにのこつた、ふゆうちは、真白まつしろ寐床ねどこもぐつて、立身たちみでぬく/\とごしたあとを、草枕くさまくら寐込ねこんで
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
膳の三本めの銚子ちょうしが、給仕はげたし、一人ではつまらないから、寝しなにあおろうと思って、それにも及ばず、ぐっすり寐込ねこんだのが、そのまま袋戸棚の上に忍ばしてある事を思い出したし
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
馬鹿にするない、見附で外濠そとぼりへ乗替えようというのを、ぐっすり寐込ねこんでいて、真直まっすぐに運ばれてよ、閻魔えんまだ、と怒鳴られて驚いて飛出したんだ。お供もないもんだ。ここをどこだと思ってる。
菎蒻本 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)