寐起ねおき)” の例文
清岡は振切って去るわけにも行かず、勧められるがまま老婆の寐起ねおきしている下座敷に通り長火鉢の前にすわった。座敷は二階と同じく六畳ばかり。
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)
はゝは年に一二度づつは上京して、子供の家に五六日寐起ねおきする例になつてゐたんだが、其時は帰る前日ぜんじつからねつだして、全くうごけなくなつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さて、その色にも活計かっけいにも、寐起ねおきにも夜昼の区別のない、迷晦朦朧めいかいもうろうとして黄昏男と言われても、江戸児えどッこだ、大気たいきなもので、手ぶらで柳橋の館——いや館は上方——何とかへ推参する。
遺稿:02 遺稿 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
この母は年に一二度ずつは上京して、子供の家に五六日ごろくんち寐起ねおきする例になっていたんだが、その時は帰る前日から熱が出だして、全く動けなくなった。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
寐起ねおきの顔にも、びんの乱れは人に見せない身躾みだしなみ
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
代助は笑ひながら、両手で寐起ねおきかほでた。さうして風呂場へかほを洗ひにつた。あたまらして、椽側えんがはかへつてて、にはながめてゐると、まへよりは気分が大分だいぶ晴々せい/\した。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
小六ころく何不足なにふそくなく叔父をぢいへ寐起ねおきしてゐた。試驗しけんけて高等學校かうとうがくかう這入はいれゝば、寄宿きしゆく入舍にふしやしなければならないとふので、その相談さうだんまですで叔父をぢ打合うちあはせがしてあるやうであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)