嬌声きょうせい)” の例文
旧字:嬌聲
それに跳びつく彼女らの嬌声きょうせいが——彼女らもまたこんなはしたない声が出せるのかと、そう驚くほど花やかに周囲にひびきわたった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
驚いたのは、そのだぼはぜ嬢、「いのよ、好いのよ」と嬌声きょうせいを発し、「あなた、とても好いわ」とぼくの肩に手を置いた事です。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
今日は親爺が親戚の法事に行きて留守といふをさいわいしきりに新宿ののろけ最中、がらりと店の硝子戸ガラスど引きあけざま、兄さんといふ嬌声きょうせい
桑中喜語 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
小さなきたならしい廃退的な酒場が、狭い間口でめじろおしに並び、あやしげなおしろいの女の、いやらしい嬌声きょうせいがあたりにあふれていた。
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
公からの使を受けた時の夫子の欣びを目にしているだけに、はらわたえ返る思いがするのだ。何事か嬌声きょうせいろうしながら南子が目の前を進んで行く。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
すると三人はすさまじい嬌声きょうせいをあげ、おたつは側にいた女に抱きついたし、残った一人は私のほうへ水をはねとばしながら、先生の****とどなった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
それがなんとも形容しがたいような嬌声きょうせいを張りあげて、あっちからも、こっちからも金の胸にぶら下るのだ。
ゴールデン・バット事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と、大変な鼻息、嬌声きょうせいを発して、縄目の身をもがく年増の美しさは一通りではありません。一筋縄で行きそうもないと見て、平次は早速攻手せめてを変えてみました。
私が道を降り切らぬうちに、二人とも曲り角で混凝土コンクリートの側壁へい上がったのでしょう、やがて私にはわからぬ母国話で、嬌声きょうせいを挙げながら、もつれ合って小径こみちを上って来ました。
墓が呼んでいる (新字新仮名) / 橘外男(著)
おのぼりさんが出会でっくわした旅宿万年屋でござる。女中か、せいぜいで——いまはあるか、どうか知らぬ、二軒茶屋で豆府を切る姉さんぐらいにしか聞えない。嫋音じょうおん嬌声きょうせい、真ならず。
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
赤いふくれた指を窮屈そうにはさみに入れて、地面に堆高うずたかく積んだ枝豆を、味気なさそうなのろのろした手付でポツンポツンと切っていて、表から店の女たちの派手な嬌声きょうせいが聞えてくるたびに
如何なる星の下に (新字新仮名) / 高見順(著)
女の嬌声きょうせい、赤ン坊の泣き声、さてはなつかしい大道芸人の音楽だの、古着屋、八百屋、旅人宿、うどん屋の婆アさんまで、かつての日の渭水いすいの場末も思い出されて、どれもこれも悪くない。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ことさらに嬌声きょうせいをあげるしろい女らの笑い
原爆詩集 (新字新仮名) / 峠三吉(著)
耳もろうする奏楽、テープの発射音、泥酔男でいすいおとこの蛮声、女たちの嬌声きょうせいの中に、ふと、異様なささやき声が、影男の殿村の耳たぶをくすぐった。
影男 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
すると三人はすさまじい嬌声きょうせいをあげ、おたつはそばにいた女に抱きついたし、残った一人は私のほうへ水をはねとばしながら、先生の****とどなった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
闇をつんざ嬌声きょうせいと共に、女は敷居際に崩折くずおれます。
四半ときほど待つうちに、庭のほうで、はでな女の嬌声きょうせいが聞えた。その部屋からは、中庭の端しか見えない。
山彦乙女 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
女たちが嬌声きょうせいをあげた。保馬はしげしげといしをながめ、それからゆっくりと云った。
いしが奢る (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
匁蝋燭めろうそくの燭台が輝き、蒔絵まきえ膳部ぜんぶが並び、役者や芸妓がとりもちに坐った、まばゆいほどの光と、華やかな色彩と、唄や鳴り物や嬌声きょうせいが……この座敷いっぱいにくりひろげられたものだ。
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
かよが嬌声きょうせいをあげた。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)