よめ)” の例文
ところで、いいかい、なるたけ注意して、このほんにわたしのよめだ、子息せがれさいじゃない、というように姑に感じさせなけりゃならん。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
その後またその家に至り姑に汝のよめは如何と問うと、仕事無精でいかり通しだと答う。そこで前同様に教え食を受けて去った。
七斤ねえさんというのは、彼女の倅のよめである。その時七斤ねえさんは飯籃めしかごをさげてテーブルそばに行き、卓上に飯籃を投げ卸してプリプリ腹を立てた。
風波 (新字新仮名) / 魯迅(著)
清の雍正ようせい年間、内城の某家で息子のためによめめとることになった。新婦の里方さとかた大家たいけで、沙河門外に住んでいた。
八十近くなって眼液めしるたらしてへっついの下をいたり、海老えびの様な腰をしてホウ/\云いながら庭をいたり、杖にすがってよめの命のまに/\使つかいあるきをしたり
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「其馬をしも船に乗せて隊兵てせい——」という丁の終りまではシドロモドロながらも自筆であるが、その次の丁からは馬琴のよめ宗伯そうはく未亡人おミチの筆で続けられてる。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
夫妻はひどくそれを歎いたが、間もなくその妻君も病気になって歿くなった。そして三四箇月したところで、長男のよめであった女も病気になってこれまた歿くなってしまった。
劉海石 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
よめっ子や忰に話して聞かせべいと思ってめえりました、皆様お変りもごぜえませんで
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
その娘は病気があるために、人によめに遣ることが出来ぬのである。商人は此娘を連れて千四百ヱルストの道をわざ/\来た。これは娘の病気をセルギウスに直して貰はうと思ふからである。
海岸に立つ二階屋の窓には女子供、新しきよめ——さう云ふ人達が首を出す。
海郷風物記 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
うそをつきたもうな、おんみは常に当今の嫁なるものの舅姑しゅうとに礼足らずとつぶやき、ひそかにわがよめのこれに異なるをもっけのさちと思うならずや。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
さりとて今夜の婚儀を中止するわけにも行かなかったと見えて、ともかくも婿ひとりによめふたりという不思議な婚礼を済ませて、奉公人どもはめいめいの寝床へ退がった。
白太夫なる百姓老爺ろうやが七十の賀に、三人のよめつどい来て料理を調うる間に、七十二銅と嫁に貰える三本の扇を持ち、末広すえひろの子供の生い先、氏神へ頼んだり見せたりせんとて
神社合祀に関する意見 (新字新仮名) / 南方熊楠(著)
老妻お百とよめのお道との三角葛藤はしばしば問題となるが、馬琴に後暗い弱点がなくとも一家の主人が些細な家事にまでアアしちむずかしい理窟をこねるようでは家がめる。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
其まゝに大きくして、内のよめにするのが多い。所謂いわゆるつぼみからとる花嫁御はなよめご」である。一家総労働の農家では、主僕の間にへだてがない様に、実の娘と養女の間に格別かくべつ差等さとうはない。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
しかし鬼でもない、じゃでもない、やっぱり人間じゃ。その呼吸さえ飲み込むと、鬼のよめでもじゃの女房にでもなれるものじゃ。
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
主翁おやじが死んで、石山の新家はよめ天下てんかになった。誰もひささんのうちとは云わず、宮前のお広さんの家と云った。宮前は八幡前を謂うたのである。外交も内政も彼女の手と口とでやってのけた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
初めは行き暮れた旅人を泊らしては路銀をぬすむ悪猟師の女房、次にはよめいびりの猫化郷士ねこばけごうしの妻、三転して追剥おいはぎの女房の女按摩となり、最後に折助おりすけかかあとなって亭主と馴れ合いに賊を働く夜鷹よたかとなり
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)