威圧いあつ)” の例文
旧字:威壓
親方はどうどうとした様子であった、かれはれいの美しいしらが頭をまっすぐに上げて、その顔には憤慨ふんがい威圧いあつ表情ひょうじょうがうかべていた。
生々せいせい又生々。営々えいえいかつ営々。何処どこを向いてもすさまじい自然の活気かっき威圧いあつされる。田圃たんぼには泥声だみごえあげてかわずが「めよえん」とわめく。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
十分、得心いたすように——くれぐれも威圧いあつするな。明日あす中には、必ず藩札引換えをいたすであろうと、ようさとして帰すように
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父兄に威圧いあつせられて、ただ儀式的に機械的に、愛もなき男と結婚するものの多からんに、如何いかでこれら不幸の婦人をして、独立自営の道を得せしめてんとは
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
次郎はかつて道江を平凡へいぼんな女だと思ったことがあったが、読んで行くうちに、その平凡さのおどろくべき成長を見せつけられ、それに一種の威圧いあつをさえ感ずるのだった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
伯父は如何にも実業界の古狸といった形で、生来大男のところへ美食と運動不足の為にデブデブふとっていますので、こんな場合にも、多分に相手を威圧いあつする様な所を失いません。
黒手組 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
治明博士は、アクチニオ四十五世の神秘しんぴな声に威圧いあつせられて、はッと、それにひれした。
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大概たいがい野狐禅やこぜんでは傍へ寄り付けません。大衆は威圧いあつされて思わずたじたじとなります。
鯉魚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
若者わかものはその全体の風貌ふうぼうからいままでに知らなかった威圧いあつをうけたので、思わず一揖いちゆうした。すると老人は音も立てずに一歩歩をすすめて、「何か思いごとがあって毎日ここにこられるのか」
おしどり (新字新仮名) / 新美南吉(著)
何とはなしに私は、ある威圧いあつを感じた。
威圧いあつされるような気持ちと、よりかかりたいような気持ちとがたえず交錯こうさくしていたのである。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
しかし、官兵衛は、何の威圧いあつも感じないようなおもてで、それへもこう答えた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
機関車が威圧いあつするようにこちらをにらんで、大きな息をはいている。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
何者だろう? 単なる通りかかりの者とも思えず、物盗ものとりの浪人らしい挙動もない。といって、立ち去る様子もなし、あくまで黙りこくッて、威圧いあつするように、こッちを凝視ぎょうししている七、八人の侍。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、荒田老はいくらか威圧いあつするような声で
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)