大夫たゆう)” の例文
中宮ノ大夫たゆう実衡さねひらの琵琶、大宮ノ大納言のしょう、光忠宰相のひちりき、中将公泰きんやす和琴わごん、また笛は右大将兼季かねすえ、拍子は左大臣実泰。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大夫たゆうげんと言って肥後に聞こえた豪族があった。その国ではずいぶん勢いのある男で、強大な武力を持っているのである。
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
二人ふたりは連れだって中二階の前まで来たが、母屋おもやでは浪花節なにわぶし二切ふたきりめで、大夫たゆうの声がするばかり、みんな耳を澄ましていると見えて粛然しんとしている。
郊外 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
引手あまたでありながら、いままで大凡おおよその女子には振向ふりむきもせなんだそなたが、我から恋をしていると言うからには、定めし相手は稀物きぶつじゃろう……何処どこぞの姫か、くるわ大夫たゆうか。
艶容万年若衆 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
「吉原の玉屋小三郎の店で、お職を張って居た薄墨うすずみという大夫たゆうを親分御存じですかえ」
しかもその玩具は手細工ですこぶる込み入ったものである。よく大夫たゆうの手元を見るが好い。拍手の起らぬのを、鶴見はむしろ不審がっている。真の大夫が舞台に出ているのではないか。
「待ちな待ちな。大夫たゆう前芸とつかまつって、一ツ滝の水を走らせる、」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「てまえこそ、近頃の倖せ。お名の高い大夫たゆうには、こうしてお話ができたし、またお手ずからなお茶までいただいて」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まして大夫たゆうげんは思い出すだけでさえ身ぶるいがされた。何事も豊後介ぶんごのすけの至誠の賜物たまものであることを玉鬘も認めていたし、右近もそう言って豊後介をめた。
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
大夫たゆうげんの恐ろしい懸想けそうとはいっしょにならぬにもせよ、だれも想像することのない苦しみが加えられているのであったから、源氏に持つ反感は大きかった。
源氏物語:25 蛍 (新字新仮名) / 紫式部(著)
長崎円喜えんき、金沢ノ大夫たゆう宗顕そうけん佐介さかい前司ぜんじ宗直むねなお、小町の中務なかつかさ秋田あきたじょうすけ、越後守有時ありとき右馬うまかみ茂時しげとき相模さがみ高基たかもと刈田式部かったしきぶ、武蔵の左近将監さこんしょうげんなど、ひと目に余る。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
院の殿上人とともに中宮職の諸員は大夫たゆうをはじめ皆参っていた。七日の夜には宮中からのお産養があった。これも朝廷のお催しで重々しく行なわれたのである。
源氏物語:36 柏木 (新字新仮名) / 紫式部(著)
七月十三日、秀吉は、拝命の御礼として、南殿なんでん猿楽さるがくを催し、叡覧えいらんに供えんと称して、天皇、皇子、五摂家ごせっけ清華せいか、その他の公卿、諸大夫たゆう、諸侍までを、こぞって招待した。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とう大納言、東宮大夫たゆうなどという大臣の兄弟たちもいたし、蔵人頭くろうどのかみ、五位の蔵人、近衛このえの中少将、弁官などは皆一族で、はなやかな十幾人が内大臣を取り巻いていた。
源氏物語:29 行幸 (新字新仮名) / 紫式部(著)
とくに兄の一条とう大夫たゆう行房は、隠岐配所おきはいしょにまでお供をして、始終、帝とあの一ト頃の艱苦を共にした侍者じしゃの一人でもあったから、還幸の後は、みかども、いちばい行房にはお目をかけられ
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
惨酷ざんこくな海賊よりも少弐しょうにの遺族は大夫たゆうげんをもっと恐れていて、その追っ手ではないかと胸を冷やした。
源氏物語:22 玉鬘 (新字新仮名) / 紫式部(著)
……と、諫議かんぎ大夫たゆう趙鼎ちょうていが、列座からすすみ出て奏上した。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
内舎人の婿の右近の大夫たゆうというのが党主のようになっていろいろのことをきめるようですよ。
源氏物語:53 浮舟 (新字新仮名) / 紫式部(著)