大刀だいとう)” の例文
今や最期と防戦に従事するその勢いは関将軍かんしょうぐん大刀だいとうひっさげて大軍に臨んだごとき勢いを示し、強くここに神咒しんじゅを唱えつつ
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
と言ったが惣兵衞も肝を潰し、大刀だいとうの鞘を払って振り上げたが、斬込む了簡もなく、只ウーン/\と云ってるばかり、小三郎は元より早業はやわざの名人ゆえ
大刀だいとうのつばを腹の上に飛び出させたまま、大の字なりに寝ころんで、汚い足の裏をこっちに向けているのである。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうする……どうするのかと思うと、やにわに大刀だいとう銀百足ぎんむかでの鞘を払った造酒だ。お妙の胸ぐら取ってそこに引き据えると同時に、紙のように白い咽喉首のどくび切尖きっさきした。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
半分は脅すつもりもあったらしく、黒鞘の大刀だいとうを横にヒネってプツリ鯉口こいぐちったところを
軍団長イワノウィッチは、大刀だいとうたて反身そりみになって、この際の威厳いげんたもとうと努力した。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
岩見重太郎いわみじゅうたろう大刀だいとうを振りかざしてうわばみ退治たいじるところのようだが、惜しい事に竣功しゅんこうの期に達せんので、蟒はどこにも見えない。従って重太郎先生いささか拍子抜けの気味に見える。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
解剖を大刀だいとうにしたものゝ苦しい人知れない悶えは、モウパツサンの『水の上』にも、島崎君は『海へ』の中へも書いてあるが、自然派の作品を読んで、その中から、醜化ばかりを見て
自他の融合 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
といいざま、真眉間まみけんをわりつけた。野武士のぶしどもは、それッと、大刀だいとうをぬきつれて、前後からおッとりかこむ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
一角は心のうちにて、己の名を知っているのは何奴なにやつか、事に依ったら、花車が来たかも知れないと思うから、油断は致しませんで、大刀だいとうの目釘をしめし、遠くに様子を伺って居りますと
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
と、すぐに廊下ろうかをふみ鳴らしてきた三人の武者むしゃがある。いずれも、あざやかな陣羽織じんばおりを着、大刀だいとうりうたせていた。まなこをいからせながら、きッとこなたにむかって
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
伯父さんは堅いかただから、すぐ大刀だいとうふるって躍込おどりこみ、打斬うちきろうかとは思いましたが、もう六十の坂を越した御老体、前後の御分別がありますから、じっと忍耐がまんをして夜明を待ちました。
「生意気な手先め、サ、構ってやるから寄ってこい」右手めて大刀だいとうを片手にふりかぶった。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そろいもそろった荒くれ男ばかりが十四、五人、蔓巻つるまき大刀だいとうに、かわ胴服どうふくを着たのもあれば、小具足こぐそくや、むかばきなどをはいた者もあった。いうまでもなく、乱世らんせいうらにおどる野武士のぶし群団ぐんだんである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
逃げ場を失ったお千絵様、すすきの根につまずいて、あわや、道太郎の烈しい大刀だいとうの下になった時、意外ではあるまいか、かえってその道太郎が、もののみごと、袈裟けさがけにされてぶッ仆れたのである。
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)