大伴おおとも)” の例文
大伴おおとも氏の「海ゆかばみづく屍、山ゆかば草むす屍」の言立ての単純さに比べると、何か見えざる身辺の反対力に必死に反抗して
中世の文学伝統 (新字新仮名) / 風巻景次郎(著)
佐伯さえき伊太知いたちとか、大伴おおともくじらおおし黒鯛くろだいなどは史上にも見える人物だし、丹念にさがせば、そんな類の名は、まだいくらでもあるだろう。
随筆 新平家 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
天下を望む大伴おおとも黒主くろぬしと来りゃあ、黒だって役がいいわ。まあ、そんなことより、これ、これ……。(びんをみせる。)又こんなものを頂いたのよ。
影:(一幕) (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
そこで大伴おおとも連等むらじら祖先そせんのミチノオミの命、久米くめ直等あたえらの祖先のオホクメの命二人がエウカシを呼んでののしつて言うには
ところが、その娘に、旦那様、人もあろうにあの大伴おおともの大納言様が眼をつけましてな、例の手管てくだで物にしようとなさっているのが分ったのでございます。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
大坪家に二十年以上も住んでいる人間ですから、渡り用人並に、少しくらいは溜めていたところで引抜いて大伴おおとも黒主くろぬしなどに化ける気遣いはまずなさそうです。
なるほど、十五年前に墨書すみがきし、その後十五年間びんの中に水を張ったのでは、大伴おおとも黒主くろぬしの手を借らずとも、今日5098の文字は消え失せているに違いなかろう。
こりゃてっきりお角が指したのだ、お角の方寸で我々をその筋へ密告したのに違えあるめえ——そうだ、道庵は袋の鼠、お角こそ大伴おおとも黒主くろぬし、あいつが万事糸をひいている
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
申すまでもないことでげすが墨染とはお芝居なんぞの中幕によくるあのせきでげすな、大伴おおとも黒主くろぬしが小町桜の精に苦しめらるゝ花やかな幕で、お芝居には至極結構なもので
「もしやおまえが、天下を狙う、大伴おおとも黒主くろぬしなら、おれも片棒かついでやろうかと、とうから心をきめているのだ。どういうものか、はじめて顔を見たときから、他人と思われなくなったのが因果さ」
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
大伴おおとも御行みゆき、粗末な狩猟かり装束しょうぞくで、左手より登場。中年男。荘重そうちょうな歩みと、悲痛ひつうな表情をとりつくろっているが、時として彼のまなざしは狡猾こうかつな輝きを露呈ろていする。………
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
このアメノオシヒの命は大伴おおとも連等むらじらの祖先、アマツクメの命は久米くめ直等あたえらの祖先であります。
真珠は高金こうきんだから僕のような貧乏医者は買って上げる訳にいかん、それに就いてかねて申上げました此方こちらのお娘子むすめごがお美しいと云うことを、北割下水きたわりげすい大伴おおともと云う剣客けんかくへ話した処が
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こいつも大伴おおとも黒主くろぬしに近いが、果して、さほどの大望を抱いて来たのか、或いは、山科の骨董商になりきって、このおやしきのお出入り商人たるを以て甘んじて御用伺いに来たものか
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「だから、謀叛人、綺麗な顔はしているが、とんだ大伴おおとも黒主くろぬしじゃありませんか」
そこで物部もののべ荒甲あらかいの大連、大伴おおとも金村かなむらの連の兩名を遣わして、石井を殺させました。天皇は御年四十三歳、丁未ひのとひつじの年の四月九日にお隱れになりました。御陵は三島のあいみささぎです。
瓜生ノ衛門 東路あずまじはさぞ淋しゅうござりましょうな。……手前もお供致しとうございました。………でも、供奉ぐぶのものはみな大伴おおとも様の御所存だったので、……残念ながら、……致し方ござりませぬ。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
蘇我氏の大逆の裏に拭うべからざる大伴おおとも小手古こてこの姫の名。
大菩薩峠:29 年魚市の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)