啓発けいはつ)” の例文
「よろしい、どっちが勝つかまあ見ていろ。小林に啓発けいはつされるよりも、事実その物に戒飭かいしょくされる方が、はるかに覿面てきめんで切実でいいだろう」
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
板垣修理之助をはじめ、座中の老巧な智将たちも、今さらのように、十七歳の弁次郎幸村に、啓発けいはつされた面持おももちであった。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
称してからも常に自分の技は遠く春琴に及ばずとし全くお師匠様の啓発けいはつによってここまで来たのであるといっていた。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
鋳金はたとい蝋型ろうがたにせよ純粋美術とは云い難いが、また校長には把掖はえき誘導ゆうどう啓発けいはつ抜擢ばってき、あらゆるおんを受けているので、実はイヤだナアと思ったけれどもげて従った。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
輿論よろんを指導し、大衆を啓発けいはつし、政府を批判し、政策を準備し、選挙に候補者を立て、選挙運動を組織し、もって漠然ばくぜんと前提されているにすぎない国民意思というものを
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
ひょっとすると、これは一人の人間の仕業かもしれないなどと思ったものはいなかったが、ランドリュの手帳に啓発けいはつされて、そういうこともありえると考えるようになった。
青髯二百八十三人の妻 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
銀太夫君は師匠から芸を習うと共に、師匠のインテリ啓発けいはつつとめた。鐘師匠かねししょうは我儘な人だけれど、気心は極く好い。腹を立てゝも、長くこだわらない。奥さんも同じことだった。
心のアンテナ (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
教会けうくわい草木さうもくまた動物どうぶつの如き自然物しぜんぶつにあらず、草木は時期じきさだめてはなむすび、小児せうに時期じき経過けいくわすれば成人せいじんして智力ちりよく啓発けいはつに至るべし、しかれども教会けうくわい人為的じんゐてきなり、復興ふくこうせんとほつせば明日めうにち
問答二三 (新字旧仮名) / 内村鑑三(著)
かく私が啓発けいはつされた時は、もう留学してから、一年以上経過していたのです。
私の個人主義 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とお母さんはこの機を利用してお父さんを啓発けいはつしようと努めた。
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
それにはこういう公会堂のようなものを作って時々講演者などをへいして知識上の啓発けいはつをはかるのも便法でありますし、またそう知的の方面ばかりでは窮屈すぎるから、いわゆる社交機関を利用して
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
頑冥がんめいなものを啓発けいはつするのは文化事業の一つだ。
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
啓発けいはつを受くる刹那せつなに大悟する場合を云うのであります。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)