唐檜とうひ)” の例文
中にも大江川に沿うたものが最も広く、次第に隆起して、エゾ松、唐檜とうひなどの侵入した焼山峠の南に続く高原に移り行くのである。
目の上の唐檜とうひに、恐ろしく長いサルオガセがぶら下っている。ブランブランと風にゆれる。河の音がする。私はねむくなって来た。
可愛い山 (新字新仮名) / 石川欣一(著)
主人らしい人のしまのシャツが唐檜とうひの向うでチラッとします。園丁はそっちを見かすかに笑い何かいかけようとします。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
アメリカ唐檜とうひの日蔭に坐っている百々子を見ると、きれいな眼もとを崩して、ニッコリと笑いかけた。
我が家の楽園 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
唐檜とうひが生えているあたり迄は段々で、それから上になると径は木の根や岩の上に出来ている。
加賀・能登辺では唐檜とうひすなわちアスナロの木をアテともクサマキともいっている。クサマキは臭槙である。この材木には一種の異香がある。アテに至ってはその義を説く者がない。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そうして、山榛やまはんの木、沢胡桃さわくるみなどが、悄然しょうぜんと、荒れ沢の中に散在している。栂、樅、唐檜とうひ、白樺などは、山のがけに多く、水辺には、川楊や、土俗、水ドロの木などが、まばらに、翠の髪をくしけずっている。
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
百貫ひゃっかん山・東谷山・牛首山・黒部別山・針ノ木谷・東沢などには、唐檜とうひ白檜しらべ或は落葉松の純林が真黒に繁っているのが見られる。
黒部峡谷 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
園丁えんていはまた唐檜とうひの中にはいり洋傘ようがさ直しは荷物にもつそこ道具どうぐのはいった引き出しをあけかんを持って水をりに行きます。
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
私と慎太郎さんとは、立ったまま、ルックサックを唐檜とうひの根にもたせかけて、休んだ。非常に傾斜の急なところに路をつくったので、こんなことが出来るのであろう。
可愛い山 (新字新仮名) / 石川欣一(著)
木は唐檜とうひが多く、飯櫃めしびつの材料に、き板に製している、晃平を使いに立てて、一泊を頼んで見たが、聞き入れない、一行は急流に架けた木橋を渡って、能呂川の対岸に出ると、北岳が頭を圧すように
白峰山脈縦断記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
尾根は石楠しゃくなげ其他の灌木に栂や唐檜とうひの若木が交って邪魔をする。時々振り返って後を見ると、南アルプスの雪が木の間に白くきらりと光る。
釜沢行 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「まあ、そうですね、それでいいでしょう。ところが、おやおや、あんなでもやっぱりいいんですか。向うの唐檜とうひが何だかゆれておどり出すらしいのですよ。」
チュウリップの幻術 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
唐檜とうひの下を四ツンばいに匐ったり、恐ろしく急な雪渓をカンジキもはかずに登ったり
可愛い山 (新字新仮名) / 石川欣一(著)
急いで荷を背負って左の尾根を下った。唐檜とうひの木立に這入ると切明けの跡が判然したので吻と安心する。又池があった、前のよりは少し大きい。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
ああそこにはクリスマストリイのようにまっ青な唐檜とうひかもみの木がたってその中にはたくさんのたくさんの豆電燈まめでんとうがまるで千のほたるでも集ったようについていました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
伐り倒された大木が朽ち残った白骨のような枯枝を縦横に逆立てている深い笹原を、針蕗はりぶきに刺されながら泳ぎ抜けて、昼も暗い白檜唐檜とうひの深林に入った。
秋の鬼怒沼 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
ああそこにはクリスマストリイのようにまっ青な唐檜とうひかもみの木がたって、その中にはたくさんのたくさんの豆電燈まめでんとうがまるで千のほたるでもあつまったようについていました。
銀河鉄道の夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
信州梓山から四時間ばかりの楽な登りを続けた後、白檜しらべ唐檜とうひの茂った薄暗い林を抜けて、漸く急な斜面にかかると、間もなく頭の上がぱっと明るくなって
秩父の奥山 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
黒檜、白檜しらべ唐檜とうひなどの針葉樹が岩の斜面にしっかりと根を下ろして、薄暗い蔭をかざしている木の間伝いに、どこからともなく大嵐の吹きすさぶに似た音が響いて来る。
渓三題 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
偃松はいまつの途切れた間や、短矮たんわい唐檜とうひ白檜しらべのまばらに散生している窪地や斜面に、や広い草原が展開して、兎菊うさぎぎく信濃金梅しなのきんばい丸葉岳蕗まるばだけぶき、車百合などが黄に紅に乱れ咲き
鹿の印象 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
下り着いた鞍部は入川谷の木賊沢と子酉ねとり川のヌク沢との分水点に当っている。唐檜とうひ白檜しらべの密生した梭葉草の多い小山を二つ踰えて、三つ目の山に懸った。この登りが飽きる程長い。
奥秩父の山旅日記 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
霧藻の垂れ下ったつが唐檜とうひなどの立派な針葉樹林である。