反返そりかへ)” の例文
『馬鹿なことを言ひたまへ。』と丑松は反返そりかへつて笑つた。笑ふには笑つたが、然しそれは可笑をかしくて笑つたやうにも聞えなかつたのである。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
一人の賊は後より小手こてのばして袈裟掛けさがけに左の肩先かたさき四五寸ばかりエイト云樣切下れば左仲はアツと反返そりかへるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
つな両手りやうてをかけてあしそろへて反返そりかへるやうにして、うむと総身さうみちかられた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
手は矢張胡坐あぐらの両膝を攫んで、グツと反返そりかへつて居た。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
見れば省吾の弟、泣いて反返そりかへる児を背負おぶひ乍ら、一人の妹を連れて母親の方へ駈寄つた。『おゝ、おゝ。』と細君は抱取つて、乳房を出してくはへさせて
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
なせしが其まゝにウンとばかりに反返そりかへれば姉丁山もかけ來り漸々やう/\にして氣は付共前後正體なく伏居ふしゐるを丁山吉六ちからを付一度文を認めさせ又吉六を三河町へ急がしたてて遣ければ猶千太郎を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
三番叟さんばそうすひもので、熱燗あつかん洒落しやれのめすと、ばつ覿面てきめん反返そりかへつた可恐おそろしさに、恆規おきてしたが一夜いちや不眠ふみん立待たちまちして、おわびまをところへ、よひ小當こあたりにあたつていた、あだ年増としまがからかひにくだりである。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
『はゝゝゝゝ、月給取が日を忘れるやうぢやあ仕様が無い。』と銀之助は反返そりかへつて笑つた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)